Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



止まり木の夜に

いらっしゃいませ。
よくぞ、この不確かな扉を叩いてくださいました。
お顔を見ればわかります。あなたもまた、この街の喧騒という名の「夢」に、少しばかりお疲れなのでしょう。どうか、その重い外套と一緒に、胸の内の孤独も預けてしまってください。
ここにあるのは、泡沫(うたかた)のような時間と、たまゆらの安ら...


幻影の証明

失礼。そこに私が座っているように見えますか。
もしそう見えるのであれば、それはあなたの瞳が、
この空虚な夜を埋めるために見せた、優しい錯覚に違いありません。指先で弄ぶこの古いコインも、
胸ポケットで時を刻む銀の時計も、
実のところ、重さなどどこにも存在しないのです。
光の加減でそこに在るように見える...


泡沫(うたかた)の沈黙

お気付きですか。
この世の理(ことわり)とは、弾けるのを待つ泡のようなもの。
私の言葉も、あなたの吐息も、
この瞬間に生まれては、次の瞬間には虚無へと還る。
それを「悲劇」と呼ぶのは、少々野暮というものでしょう。「たまゆら」……ほんのひと時。
玉が触れ合うかすかな音ほどの...


五月の月

五月の夜風は、使い古したシルクのハンカチのように、街の汚れをなでていった。
だが、そんなのはただの気休めにすぎない。空には、磨きそこねた銀貨のような月が浮いている。
そいつは安物のバーの照明みたいに、路地裏のゴミ箱や、行き場を失った酔いどれの影を、容赦なく白日の下に曝け出していた。
お節介な光だ。黙...


五月の月


青い 玻璃(はり)の夜を 風がわたる
樹々の梢(こずえ)が さざめいて
見えない指さきが そつと
空の頁(ぺえじ)を めくつてゆく窓をあけて 待つてゐたのだ
おまへのやうな しづかな光が
庭の隅の ヒアシンスの影を
やはらかく なぞるのをああ 五月の月を ゼリーにして
銀のさじで すくへたなら!
...





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