★昭和初期の文語調の文体で★
それは誰が遺せしやさしき夢の跡ならむ
草の葉のうしろにて ひそかにささやき交はす夜
森の梢はそよぎ あはき薔薇いろの月は
しづかに澄める空を わたりゆくなり森の奥の 見知らぬ小さきくぼみには
名もなき白き花の ひっそりと咲きてあれ
あわき紅の月ひかりを浴びて
その花びら...
★昭和初期の文語調の文体で★
それは誰が遺せしやさしき夢の跡ならむ
草の葉のうしろにて ひそかにささやき交はす夜
森の梢はそよぎ あはき薔薇いろの月は
しづかに澄める空を わたりゆくなり森の奥の 見知らぬ小さきくぼみには
名もなき白き花の ひっそりと咲きてあれ
あわき紅の月ひかりを浴びて
その花びら...
明けない夜のなかで 森はしずかにため息をつき
私はあなたの名前を 風のなかに失ってしまうしかし 深い闇のむこうから
かすかな光が 梢を優しくたたきはじめる
それは夜を連れ去る あたらしい朝の羽ばたき
ねむっていた小鳥が 小さく瞳をひらき
露にぬれた白い花が また静かに息を吹きかえす薄紅の月は 山の端...
花はかおりをはなち 鳥はまたねむりにつく
すべてがひとつの幸福な記憶のなかへ沈むとき
私のこころも あなたの影のなかにとけてゆくけれども 夜はあまりにも深く
月の光は 冷たい涙のように
私の手のひらのうえで ただ白く凍えている
あなたはもう どこにもいないのだと
風が耳もとで 何度もささやきつづける...
森の奥の 見知らぬ小さなくぼみで
名もない白い花がひっそりと咲いている
あわい紅いろの月のひかりを浴びて
その花びらは まるで夢のようにふるえている梢のやみでは 一羽の小鳥が
あたたかい夜の風に かすかにつぶやく
あれは失われた季節をなつかしむうたか
それとも 明日の旅立ちを告げるおとずれか私たちは...
それは誰が残したともしれぬやさしい夢のあと
草の葉のうしろで ひそやかにささやく夜
森の梢はそよぎ あわい薔薇いろの月は
しづかに澄んだ空をわたつてゆくもう帰ることのない日々の美しい面影を
このみづみづしい光がふたたび照らしだす
風はかなしげに木々のあいだを吹きぬけ
私はただ立ちつくして みつめてい...