ある曇った秋の日の暮方である。一人の男が、雨やみを待つやうに、自らの言葉のゆくえを眺めていた。そもそも「言霊」などといふものは、多分に怪しげな、あるいは哀れな、人間の錯覚にすぎない。言葉に魂が宿るのではない。人間が言葉といふ頼りない器に、己の肥大した自尊心や、見窄らしい欲望を無理に詰め込んでいるだけ...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
ある曇った秋の日の暮方である。一人の男が、雨やみを待つやうに、自らの言葉のゆくえを眺めていた。そもそも「言霊」などといふものは、多分に怪しげな、あるいは哀れな、人間の錯覚にすぎない。言葉に魂が宿るのではない。人間が言葉といふ頼りない器に、己の肥大した自尊心や、見窄らしい欲望を無理に詰め込んでいるだけ...
これは、ある破滅した男の書き置きである。第一の手記。私の言葉には、昔から不吉な毒が混じっていた。
言霊、という美しい響きを耳にするたび、私は吐き気がする。
私にとって言葉とは、他者を騙し、自分を切り刻むための、冷たい剃刀の刃にすぎなかったからだ。子供の頃から、私は嘘ばかりついて生きてきた。
悲しくも...
あゝ、言葉。
言葉、言葉、言葉。
口から出た瞬間に、すべてが嘘になってしまう。
私はいつだって、言霊なんて大層なものを、
ただの道化の紙吹雪みたいに撒き散らしてきたのだ。「愛しています」
そう言った口の端で、私は自分の体裁ばかりを気にしている。
「死にたい」
そう呟いた夜にかぎって、私は人一倍、明日...
ひとひらの言の葉が空に舞ひあがり
つめたい風はそれを遠くへはこぶ
森の葉はさやぎ 草はひそかに囁き
言霊は光のなかでやはらかく息づくおまへが口にしたちいさな祈りは
いつしかひかりの環(わ)となってひろがり
しづかな夕べの空にむすばれてゆく
なみだのあとには美しい虹がかかるやうに私はただ 窓辺によりか...
ひとつの言の葉をちぎつては風に放つ
それは青い空の涯にきえてしまふのだらうか
それとも誰かの耳朶をかすめて
遠い日の記憶をふたたび蘇らせるのだらうかわたしはまつすぐに歩きつづけていた
いつかのやうに夕映えのなかで口笛を吹きながら
道は草に埋もれ 雲はちぎれてながれ
すべてはうつろふ影のやうであったの...