白樺のそよぐ夜に 星屑とこおろぎの丘
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/08/30 10:38:43
風の香が吹き抜ける 誰もゐない丘のうへを
白樺の葉のすれあふ音が かすかに闇にこぼれてゐる
見上げる天空の 凍てついた星屑らは
ぼくの届かない場所で ただ無口にまたたく足もとの茅萱のなかに こおろぎの細い銀の糸が
冷たい土の底へ たえ間なく沈んでゆく
それは だれに聴かれることもない祈り
夜のなかに...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
風の香が吹き抜ける 誰もゐない丘のうへを
白樺の葉のすれあふ音が かすかに闇にこぼれてゐる
見上げる天空の 凍てついた星屑らは
ぼくの届かない場所で ただ無口にまたたく足もとの茅萱のなかに こおろぎの細い銀の糸が
冷たい土の底へ たえ間なく沈んでゆく
それは だれに聴かれることもない祈り
夜のなかに...
ただひとつの足音もなく 夜は更けてゆき
丘のうへの枯れ草は 冷たく身をこわばらせる
見上げる天空の 凍てついた星屑らは
ぼくの届かない場所で ただ無口にまたたく草の根に こおろぎの細い銀の糸が
深い闇の底へ たえ間なく沈んでゆく
それは だれに聴かれることもない祈り
消え入るような ぼく自身の息づか...
そよ風は かすかな草の匂いをはこび
藍色の闇のなかに ひそやかにひろがる
見上げる天空の またたく星屑らは
いつか失われた 古い約束のようだ足もとで こおろぎの細い銀の糸が
夜の深さのなかへ たえ間なくつむがれる
それは ぼくの心にのこる小さな歌
きみがもう忘れてしまった 消え入りそうな歌かなしみは...
僕はただ しづまりかへつた森にゐる
声をなくした つめたい風の森よ
梢をわたる風さえも いまは息をひそめ
世界のすべてが しんと凍りついてしまったごらん 音もなくこぼれる月明かりが
影ばかりの僕の足もとを 白く照らすのを
あんなに遠くへ去つてしまった 僕の時間(とき)は
この深い沈黙の底に 深く沈ん...
僕はまた ひとりで帰つて来たけれど
なにひとつ語らぬ うつろな風の森よ
梢をわたる かなしいソナチネのやうに
遠い幼い日のあしおとが いまもきこえるごらん 冷たい月明かりのしづくが
ぬれた僕のまぶたに そつとこぼれるのを
あんなに輝いてゐた みどりの季節は
夜の青いひかりのなかに しづかに消えた風は...