Nicotto Town


人に優しく


愛と平和を

踏むがいい

司祭は足をあげた。

足に鈍い重い痛みを感じた。

それは形だけのことではなかった。

自分は今、自分の生涯の中で最も美しいと思ってきたもの、最も聖らかと信じたもの、最も人間の理想と夢にみたされたものを踏む。

この足の痛み。

その時、踏むがいいと銅版のあの人は司祭にむかって言...

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無知

ぼくらは言う。

「ぼくたち、何ひとつ悔いていません。悔いることなんか、何もないんです」

長い沈黙ののち、彼が言う。

「私はね、窓から何もかも見たのだよ。あの一切れのパン……。しかし、懲罰は神だけの権限なのだ。おまえたちに、神の代理を務める資格はない」

ぼくらは黙っている。
...

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だめになる

あんなひどいことを言うつもりじゃなかった、と言って聖は泣いた。

わたしは違うの、と言って、あなたは何も間違ったことを言っていない、わたしが悪いのと言って、わたしの腕をさする聖の腕をさすった。

聖は、違うの、わたし意地悪になって、いつもこうなってしまうの、それでいつもだめにしてしまうの、何...

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キス

審問官は口をつぐんだあと、囚人が何と答えるか、しばらく待ち受ける。

相手の沈黙が彼には重苦しくてならない。

囚人がまっすぐ彼の目を見つめ、どうやら何一つ反駁する気もない様子で、終始静かに誠実に耳を傾けていたのが、彼にはわかっていた。

老審問官にしてみれば、たとえ苦い恐ろしいことでも...

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「姉さんな、あんたにはあげる形見がなにもないから、自分が持ってる目に見えないもの、たとえば学力とか、健康とか、知識とか、ちっとはあるかもしれない才能とか、そんなものをそっくりあんたに譲っていきたいと思ったの。それにはどうすればいいかと考えているうちに、いいことを思いついた。どんなことかというとな、あ...

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