六月の雨のなかの惜別
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/06/20 21:48:44
六月の雨は しづかに降りつづき
あぢさゐの森を ふかく濡らしてゆく
うつろふ花びらの あをい影のなか
わたしのこころは ひとり迷つてゐるあなたの言葉は ひとしづくの露
葉すゑに震へて すぐに消えてしまつた
呼びかける声は 霧にさへぎられ
冷たい風だけが 黄昏を渡る薄暗い雨の光が あわく差し込んで
も...
六月の雨は しづかに降りつづき
あぢさゐの森を ふかく濡らしてゆく
うつろふ花びらの あをい影のなか
わたしのこころは ひとり迷つてゐるあなたの言葉は ひとしづくの露
葉すゑに震へて すぐに消えてしまつた
呼びかける声は 霧にさへぎられ
冷たい風だけが 黄昏を渡る薄暗い雨の光が あわく差し込んで
も...
夜が明ける前の 深い闇のなかで
古いレコード盤が 静かに回りつづけてゐる
ビリーの歌ふ「奇妙な果実」の気だるい響きが
部屋の隅の 煙草の煙に溶けてゆく
遠い記憶のやうな青いよどみ窓の外を見れば 東の空がかすかに震へ
夜明けを告げる 暁(あかつき)の光が生まれる
私の心にあるのは
いつか異国の砂漠で見...
ふと見あげれば 窓のむこうに
おおきな 白い雲がわき起こつている
それは あたらしい季節のまねき
青い空のキャンバスに ぽつくりと浮かんだ
ちひさな ちひさな 旅人のやうにわたしは ペンをそつと置いて
まだすこし濡れている 青いノートを閉じる
わすれな草のページは 胸のなかにしまつて
いま あたらし...
わたしは ノートのすみに
小さな わすれな草の絵をかく
その花びらは 空のかけらのやうに
しづかに しづかに 青くひかる
それは あなたへのひそやかな約束春の風が また頁(ページ)をめくれば
花の匂ひが 部屋にひろがる
「わたしを忘れないで」
小さな花のことばが インクの文字になって
わたしの胸のな...
やがてオルゴールは うたひ終はり
しんとした闇のむかうから
あたらしい朝のひかりが こぼれだす
青い霧は 窓辺から立ち去り
世界はもう一度 きらめきをとりもどすだれもいない部屋の すみずみまで
やはらかな光の帯が のびてゆく
あんなに深く かなしかった夜も
このひかりのなかに とけてゆくのだ
それは...