カウンターの隅、止まったままの時計。
マスターは何も聞かず
ひび割れたグラスに、毒のような琥珀を注ぐ。氷が溶けて、カランと鳴った。
それがこの街で、唯一信じられる音だ。
薄まった安酒が、荒れた喉を焼き
胃の底に眠る「後悔」を、静かに揺り起こす。「お代わりは?」
首を振って、最後の一口を飲み干した。
...
カウンターの隅、止まったままの時計。
マスターは何も聞かず
ひび割れたグラスに、毒のような琥珀を注ぐ。氷が溶けて、カランと鳴った。
それがこの街で、唯一信じられる音だ。
薄まった安酒が、荒れた喉を焼き
胃の底に眠る「後悔」を、静かに揺り起こす。「お代わりは?」
首を振って、最後の一口を飲み干した。
...
雨は、世界の汚れを洗うわけじゃない。
ただ、隠しておきたい傷跡を
生々しく、黒く、浮かび上がらせるだけだ。軒先から滴るしずくが
ブリキのゴミ箱を、執拗に叩いている。
誰かが書いたシナリオ通りに
空は、重たい鉛の蓋(ふた)を閉じた。火をつけた煙草が、湿気でうまく燃えない。
指先に残る微かな紫薬の匂いも...
灰皿に押し付けた
昨夜の嘘が、最後の一煙を吐き出した。
東の空が、古い傷口のように
じわりと、白く、濁り始める。街はまだ、死んだように静かだ。
湿ったアスファルトが
俺の靴底の孤独を、無愛想に跳ね返す。「希望」なんて言葉は
コーヒーの出がらしと一緒に、排水溝へ流した。
これから来るのは、ただの「今日...
ああ、あんなに美しかった闇が、少しずつ薄汚い灰色に濁ってまいりました。
東の空が白むたびに、私は自分の内臓がひっくり返るような、耐えがたい嫌悪感を覚えるのです。夜明け。
皆様にとっては希望の象徴なのでしょうが、私にとっては、それは無慈悲な「点呼」の時間でございます。
「お前はまだ、そこにいるのか」
...
よくよく考えてみれば、私は生まれた時から、この世界の「おまけ」のような存在だったのかもしれません。
皆様が当たり前のように手にされる、あの「明日を信じる」という才能が、私にはどうしても欠落していたのでございます。人並みの顔をして、人並みの言葉を使い、人並みの悲しみに浸ってみせる。
そのたびに、私は自...