Nicotto Town


人に優しく


愛と平和を

もう何ともない

お雪は黒目がちの目でじっと此方を見詰めながら、「あなた。ほんとに能く肖ているわ。あの晩、あたし後姿を見た時、はっと思ったくらい……。」

「そうか。他人のそら肖って、よくある奴さ。」

わたくしはまア好かったと云う心持を一生懸命に押隠した。

そして、「誰に。死んだ檀那に似ているのか。」...

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やって来たよ

彼女はぎくっとした。

自分の目に映る彼の姿同様、彼の目には自分がひどく老け込んで見えていることが分かったからであり、そのことに耐えられるほどの愛が、自分と違って彼には残っていないと思ったからである。

祭りで初めて会ったときと同じく、彼のワイシャツは汗でぐしょぐしょだった。

そしてあ...

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入れ替わり

「いい音」

ふりむいた由仁は目を輝かせていた。

和音もうなずく。

「いい音だね」

笑顔だ。

よかった。

ほっとした。

僕にはふたりがわからない。

ピアノを弾けなくなった由仁が、ピアノの前にすわって鍵盤を叩くことにびくびくする。

和音に対して投げる...

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俺のおごり

「あんたなんかお呼びじゃないわ」

ザジがやり返す。

「お嬢さん」

トルースカイヨンが言う。

「もっとお行儀よくしなきゃいかんね、目上の人には」

「すてきだわ、わたしを庇ってくださるなんて」

ムアック未亡人が言う。

「行こう」とガブリエル。

「『昼盲症溜...

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曾おじいちゃん

「無名、これ食べるか。」

曾おじいちゃんが軽くトーストしてくれたライ麦のパンは香ばしいけれど、噛むのが大変だ。

乾いた穀物の尖った悪意が口の中の粘膜をいっせいに刺す。

血の味がする。

穀物は摘み取られ、脱穀され、粉にされ、捏ねられ、焼かれてもまだこんなにトゲトゲしく反抗し続け...

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