《雨はまだ降っている》
- カテゴリ: 日記
- 2025/07/18 20:13:56
雨粒のひとつひとつが
彼女の名前を知っているような気がした。傘をさしていても
頬は濡れる。
それが涙かどうか、わからないままで。部屋に戻ると
椅子がひとつ足りない。
カップは二つあるのに、
テーブルが広すぎる。光がカーテン越しに差し込んで
彼女の不在だけを照らしている。私はその場所を
...
雨粒のひとつひとつが
彼女の名前を知っているような気がした。傘をさしていても
頬は濡れる。
それが涙かどうか、わからないままで。部屋に戻ると
椅子がひとつ足りない。
カップは二つあるのに、
テーブルが広すぎる。光がカーテン越しに差し込んで
彼女の不在だけを照らしている。私はその場所を
...
誰かの声が届くたび、私はその音の輪郭を銀の解剖刀でなぞるようにして受け取る。
あまりに柔らかく、あまりに近く、その熱は、血ではなく毒のように肌の裏側を這ってくる。
そして私は知っている。
ふれるより先に、身を引いた方が美しいということを。 人の眼差しが花であるなら、それは咲いた瞬間に腐臭を孕む...
風がテーブルを撫でるたび、
そこに君の手のぬくもりが
ふいに戻ってくる気がした。
あの日、ふと触れた瞬間の体温が
時間を越えて、
今もこの部屋に棲んでいる。 涙が出そうになるのは、
たぶん哀しいからじゃない。
まだ名前のついていない感情が、
心の奥で静かに膨らんでいるだけ。 ほら、君...