Nicotto Town ニコッとタウン

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硝子細工の如き精神

硝子細工の如き精神(こころ)を抱え、貴方は今日まで歩んでこられました。世に言う「折れない心」など、無機質な鋼鉄の幻想に過ぎません。真に強靭な魂とは、幾度も砕け、その破片を自らの血で繋ぎ合わせた金継ぎの器のようなものでございます。「なぜ、私だけが」その問いは、深淵へと続く階段の入り口。
しかし、お気付...

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忘却の彼方へ

古いレコードが溝をなぞる音と
琥珀色の液体が喉を焼く熱さ
それだけが、この部屋の沈黙を肯定してくれるかつて守り抜こうとした約束も
胸に刻みつけたはずの痛みも
時間のやすりに削られ
滑らかな無へと変わっていく窓の外、ヘッドライトの列が
遠い銀河のように流れては消える
あの中に俺の居場所はもうないし
誰...

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灰色の雨、午前四時

トレンチコートの襟を立てても、
吹き抜ける夜風は防げない。
使い古されたライターの火が、
一瞬だけ過去を照らして消えた。影を背負い、石畳を歩く。
誰かを追いかけるためではなく、
ただ、重すぎる記憶を置き去りにするために。かつての誓いは、安酒の酔いと共に溶け、
真実は、遠くで鳴り響くサイレンの音に掻き...

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錆びた航跡

タラップを上がり、鉄の甲板に立つ。
重いドラの音が、胸の奥の空洞を震わせた。船がゆっくりと岸壁を離れる。
雨のカーテン越しに、防波堤に佇む小さな影が揺れていた。彼女の姿が、一歩、また一歩と遠ざかる。
伸ばされたままのその手は、もはや雨粒を掴むことしかできない。俺は胸ポケットから、火のつかない煙草を取...

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断ち切る指先

「行かないで」
掠れた声が、土砂降りの舗音に混じった。彼女の指が、雨に濡れた俺のコートに縋りつく。
その白く細い枝のような指先が、
かつて愛した温もりを思い出させようと、必死に抵抗していた。「……もう、俺の居場所はここにはない」振り返れば、崩れ落ちてしまいそうになる。
だ...

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