雨の日の午後とあじさい
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/06/16 03:00:24
窓の外には しずかな雨
昼下がりの 淡いひかりのなかで
庭のあじさいが そっと濡れている
青からむらさきへ うつろう色彩(いろ)それは だれかが置き忘れた
小さな日傘のようでもあり
記憶の底に 咲きそめた
遠い日の まぼろしのようでもあるひとりで聴く 雨の音は
どこか なつかしい歌のようで
わたしは...
窓の外には しずかな雨
昼下がりの 淡いひかりのなかで
庭のあじさいが そっと濡れている
青からむらさきへ うつろう色彩(いろ)それは だれかが置き忘れた
小さな日傘のようでもあり
記憶の底に 咲きそめた
遠い日の まぼろしのようでもあるひとりで聴く 雨の音は
どこか なつかしい歌のようで
わたしは...
雨は冷たい。
アスファルトが濡れるたび、過去の記憶がにじみ出る。トレンチコートのポケットに両手を突っ込み、
煙草の煙を天井に吹き付ける。窓を打つ雨音は、どこか古びたジャズのようだ。
退屈な街のノイズを、すべて洗い流してくれる。ウイスキーのロックグラスを傾けると、
氷がカランと、寂しげな音を立てた。静...
静まり返った部屋_
鳥籠のなかの小さな羽ばたき。
レコードの溝を滑る針が、
あの物憂げなオルガンの音を、ぽつり、ぽつりと落としてゆく。
中折れ帽の庇を引き下げれば、
世界はただ、冷たい青の一色に染まる。トレンチコートの襟に顔を埋め、
寂れた路地裏の、濡れた石畳を歩いてゆく。
消えかけたネオン、遠くで...
冷たい雨が窓を叩く、青い影だけが息づく部屋。
レコードの溝に針が落ち、あの懐かしいオルガンの旋律が滑り出す。
軽やかで、どこか胸を締めつける、哀愁を帯びたリフレイン。
それは、感情を削ぎ落として生きる俺の、たったひとつの逃げ場所だった。トレンチコートのポケットに両手を深くねじ込み、
煙草の煙の向こう...
激しい雨が、波止場のコンクリートを黒く染めていく。
男は一人、海を見つめて立っていた。米軍の古い放出品だという、漆黒のトレンチコート。
大きく立てた襟が、容赦なく吹き付ける潮風を遮っている。
汚れ一つないそのコートは、泥にまみれたこの港町で、奇妙なほど気高く見えた。耳の奥で、またあの「エターの歌」が...