「星の王子さま」舞台の中米でミュージアム計画
- 2014/03/09 09:54:46
「星の王子さま」に魅せられ研究 舞台の中米でミュージアム計画
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140306/ecn1403061813004-n1.htm
還暦を過ぎてサン=テグジュペリの「星の王子さま」に魅せられた人がいる。東京都世田谷区の元商社マン、平尾行隆さん(73)は、この名作童話の研究家。物語の舞台となった中米エルサルバドルに「星の王子さま」のミュージアムを作る計画を進めている。
「(現地の)国立図書館の館長がパートナーで動いています。すでに建設用地は確保済みです」
元三井物産の社員。1970年代中ごろの4年間、日系合繊織物工場に取締役として派遣され、エルサルバドルに住んでいた。「大きな組織の歯車になって働くのはいやになって」、50歳で退職。「星の王子さま」との出合いは2000年10月、還暦を過ぎてからのことで、横浜の書店で立ち読みしたある月刊誌がきっかけ。
「その中にサン=テグジュペリの妻コンスエロが書いた手記が載っていた。僕はエルサルバドルにいながら、エルサルバドルで生まれた彼女のことを全然知らなくて『これは恥ずかしいな』と、あらためて『星の王子さま』を読んだのです。それまで少女趣味のメルヘン小説と思っていたのですが、非常に哲学的かつ新鮮な感覚で、内容の素晴らしさに驚きました」
コンスエロは「星の王子さま」が愛するバラのモデルといわれている。ピアノを弾き、絵も描く美しい女性。平尾さんも彼女に魅せられ、翌年から再びエルサルバドルを頻繁に訪れるようになり、いつしか「星の王子さま」の研究がライフワークとなった。
講演や本の出版などさまざまな活動を展開している。昨年4月には『星の王子さまとサン=テグジュペリ』(共著、河出書房新社)を出版。現在、コンスエロの伝記を執筆中だ。
「コンスエロは『星の王子さま』の創作に大きな影響を与えた女性です。そのことをもっと多くの人に知ってほしい。ミュージアム建設プロジェクトの活動費は、ほとんど持ち出し。でも僕にしかできないことをやっている。それがおもしろいね」
今年はサン=テグジュペリの没後70年。4月に米ニューヨークで開かれる「星の王子さま」の展覧会に出席した後、エルサルバドルを訪問する予定。いくつになっても夢の実現に向けて努力する、取り組めるものがある、というのは幸せなことではないか。
■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県生まれ。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。ギター流し、週刊誌編集者など二十数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、経済、社会問題など幅広い分野で執筆。新著「死ぬのにいくらかかるか!」(祥伝社)など著書多数。