とるりくるり
- 2024/02/26 02:08:05
ぴき、と庭に置いてある4インチもの厚さがある木のテーブルにひびが入った音を聞いた午後に時間がそこでとまってしまった。
さあ、どうしよう?
通りへ出てみると、ランニングシューズに短パンをはいて走っていたであろう女は空中で停止して、公園のバスケットコートではリバウンドをとろうする姿勢のまま空中でとまっている男もいる、空には紫色の鳥が羽ばたいた状態でとまり、スプリンクラーの水も空中で固まっている。
触るとやっぱり生ぬるい公園の水だ。
意外と空中にあるものって多いんだな、なんてことを思いながら、通りを歩いた。
ああ、たしか明日、タイムワーナーへケーブル代の支払いをしなければいけないな、そして、そのあとに来週のアップステート行きの列車時間を調べようと考えて、しかし、このまま時がとまったままならばはたしてあしたは来るのだろうか?と考えた。
今、なにかおかしいと思う。
さっきまで時間が動いていた、確かに動いていたと思ったが、それは本当だろうか?
本当に時間はとまっている状態ではなく、動いていたのだろうか?
ランニングしている女は本当に確かにさっきまで走っていたのだろうか?
空中にとまったバスケットボールは確かにシュートされてリングにはじかれ落ちていく途中だったのだろうか?
さっきまで本当に時間が動いていたのだ、世界が確かに息づいていたのだ、ということの確信が少し曖昧に思えるんだ。
本当は、ほんとうは時間はいつも止まっているものなのではないか?
いつもとめどなく流れ動いているものだという確証なんてどこにあるんだろう?
ほんとうはそうじゃないのに、おれが勝手に作り上げたゆめみたいなことなのではないだろうか?
少し、あしもとがゆらりとゆれて、今まで確かにあった地面が不確かなものになるような、そんな感覚だけがあるのだ。
横断歩道を渡る。
角にあるタイフードレストランを左に曲がる。
ふと気がつくと、君が目の前でけらけら笑っていた。
おれをからかっていたのかよ?
おれは彼女の冗談に少し腹を立てたが、屈託のない笑顔に、まあいいか、と笑った。
まったくいたずらがすぎる彼女も考えものだ。
そういえばマトリックスの世界観にも通用するものがありますねw実は今自分がいる現実は現実世界じゃなく、作られた世界だった・・・とか。
しかし、この特技(いたずら)は使いようによってはとても便利ですね!