にゃんすけの奇妙な冒険(1)(小説リレー)
- 2024/04/14 23:02:30
僕の名前はにゃんすけ。
お察しの通り、三毛猫さ。
日本のイタバシクってところで生まれた。
住所はそのときによって違う。
僕はいつも住むところを変えるんだ。
飽きたら貨物船に乗って別の街に行くのさ。
ニューヨークにだって、アムステルダムだってオキナワにだって住んだ。
僕よりも多くの街に住んだ猫も人間もいないんじゃないかな?
今はもう落ち着いたさ。
素敵な彼女と結婚して、子供だって2匹もいるんだ。
じゃあ、僕がいろんな街で体験した不思議な話を五つ。
ぜんぶ本当の話さ。
最初の話は、ニューヨークに住んでた時の話だ。
僕はクイーンズのサニーサイドって町に住んでたんだ。
ローニーっていう韓国人の留学生の女の子のアパートに居候してた。
僕はいつも地下鉄に乗ってニューヨークの街中を探検に行くんだけど、その日も7番線に乗ってマンハッタンへ行こうとしてた。
電車が走り出すとすぐ、隣の車両からメキシカンのおじさんが二人僕の乗ってる車両に来てさ、ギターとアコーディオンで演奏を始めた。
メキシカンらしい陽気な歌さ。
スペイン語は少ししかわからないけど、どうやら愛した人が去ってしまったという歌らしい。
メキシコ人ってそんな哀しみも明るく歌うんだよな。
そしたらさ、車両の一番奥に座ってた黒人のおじさんがさ、そのメキシカンの歌に合わせてハーモニカを吹き始めたんだ。
そのおじさんは赤と白の杖を持ってる盲目の人だったんだ。
サングラスをかけて、熱のこもった演奏をしてさ、それがカッコいいんだよ。
おじさんはハーモニカを吹きながら時々、ヒャア!とか、イッヒーッ!なんて掛け声を出すんだ。
それで、みんな、盛り上がって、口笛鳴らしたりしてたよ。
そしたら、乗客の一人のお兄さんがさ、座席に座ったまま足踏みしてリズムを刻み始めたんだ。
それから、乗客のみんなが、次々にそれに合わせて足踏みしてさ、車両の全員がその音楽に参加してた。
もう、車両内は大盛り上がりでさ、次の駅についても誰も降りないで演奏が続いたんだ。
もちろん、後から乗ってきた乗客たちはびっくりしてたよ。
だけど、すぐにニコニコの笑顔になって、みんなと一緒に足踏みを始めるんだ。
そのままグランドセントラル駅に着いて演奏が終わったんだ。
みんな拍手喝采で、それぞれ隣の人とハイファイブしたりしてて、ハッピーな時間だったよ。
でもね、誰も気づいてなかったけどさ、僕は気づいていたんだ。
あの盲目のおじさん、あれはサニー・テリーだ。
伝説の盲目のブルースハーピスト。
1950年代に同じく盲目のギタリスト、ブラインド・ボーイ・フラーや、盲目ミュージシャンのブラインド・ゲイリー・デイビスなんかと組んでプレイしていた。
サニー・テリーは1986年3月11日に亡くなっていて、場所は定かではなく、記録がない。
そして、その日はそれからピッタリ30年後の2016年の3月11日だったってことさ。
30年っていう数字に何か意味があったのか、それともただ久しぶりにハーモニカが吹きたくなってフラッとこの世に立ち寄ったのかはわからないけどさ。
自慢じゃないが、僕はジャズもロックンロールも、ブルースもその辺の人間では太刀打ちできないほど博学なのさ。
イタバシクの家の主人がレコードキチガイでさ、僕はそれで古い音楽をしこたま聞かされたし、音楽雑誌だって山ほど読んだ。
猫に雑誌が読めるのか、だって?
はは、少なくとも君たちよりは読むのが早いぜ。
サニー・テリーはお気に入りのブルースハーピストの一人だから写真や映像を何度も見たことがあるし、それに「ブルースの殿堂」入りしてる偉大なミュージシャンを間違えるはずがない。
あの時、7番線でハーモニカをプレイしていたのは間違いなく彼だったのさ。
あんなクロス奏法を吹けるのは彼以外にいるわけもないさ。
みんなにも見せたかったよ。
きっと誰もあんなにクールなブルースハープ、聴いたことないと思うよ?
https://m.youtube.com/watch?v=u_4xQ20tM5g&pp=ygUd44K144OL44O844O744OG44Oq44O844CAYmx1ZXM%3D
電車がグランドセントラル駅に着いた時、みんなが大盛り上がりの中、サニー・テリーはニコニコしながら静かに電車から降りていった。
僕は慌てて彼の後を追いかけたけど、彼はそのほんの一瞬の間に人ごみの中に消えていったんだ。
これが僕がニューヨークで体験した不思議な話さ。
次の町はどこにしようかにゃ?
ありがとう!
うん、たま〜にニューヨークではこんなことが起こるんです(^-^)
こないだは、Green Dayが地下鉄のホームでいきなりゲリラライブをやったらしい!
見たかったな〜。。
音楽も聴いてみたけど、足踏みついでに首まで振りそうで、楽しい音楽ですね^^
ありがとう〜(^-^)
良かったら、小説リレー、参加してね〜!
素敵だニャン