ハドソンリバー
- 2024/04/19 12:54:49
ハドソンリバーを眺めていた。
ゆるく灰色の空。
川にはゴミを運ぶ貨物船が浮かび、気怠く重たい水面を南に進んでる。
火曜日の午後1時40分。
おれは立ち上がって、遅い昼飯を食べにダンボのメキシコ料理屋に入ってブリトーを注文する。
赤く燃えたような色の皿に乗ったブリトーは丸々と張り詰めていて、食べられるのを待っている。
食べ終えた口の端にはサワークリームが付いている。
昨日まで考えていたことは、まるで溶けてしまっていて、今日が初めての新鮮な1日のように思えていたが、しかし、もう夕方になれば1日は死ぬのだろう。
一体、どうやって帰ればいいのだろう。
おれはストリートの真ん中に仰向けに寝転んで、空を眺めた。
ぼーっと見ていると灰色の空というのは、淡く太陽の光が差し込む箇所もところどころにあるし、灰色の雲の厚みは薄いところもあって、それはそれで美しいものだと思っていた。
もちろん、車を運転しているドライバーは道の真ん中に寝てるやつがいるんだから、おれにクラクションを鳴らしている。
おれは目をつむる。
深く目をつむる。
どうやら、ドライバーは車から降りてきて、おれに怒鳴っているようだ。
が、
おれは深く沈んでいくので、やがて、声は遠くなる。
暗闇の中に沈んでいくと、冷たい粘土質の土に体が包まれていて、心地よい。
夢を見ていたようだけど、思い出せない。
気づいたらもう夕方で、目を開けると空はオレンジ色に染まっていた。
灰色の雲はもうどこかへ移動したようで、すっかり空が見えている。
おれを立ち上がって、それから歩き出す。
誰もいない道路を歩いて。
ハドソンリバーはオレンジ色に染まって、ゆらゆら揺れて。
ゴミを運ぶ貨物船は仕事を終えて帰るところだ。
一日が死んでいく。
そしてまた、明日の朝、一日が生まれる。
今はまだ、あなたを思い出しているだけで、それだけしかできないけれど、まだ。
いつかまたいつか。
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- Arya-Sa
- 2024/06/29 14:48
- ケニーさんは海外の経験が多いのかな?しかし一日が死ぬとはどういうことか?インパクトのある言葉だが。もう少し成熟させる余地のある掌編小説。ハドソンリバーとか他の表現が良い。
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