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君へ送る手紙~ (提案用小説)

投稿者:ۥ三ツ又

 宛名の無い封筒がデスクに届いていた。差出人の名前もない。
「誰からだよ、これ。」
 この忙しいのに、と誤配されただろう封筒を手に取り、何か手がかりがないか調べた。封を留める部分に数字のシールが貼ってある。12というのは何か意味があるんだろうか。
 そんなことを考えた矢先、何の前触れもなくシールが剥がれ落ちた。慌てて捜すがどうしてだか見当たらない。中を勝手に見るのは気が引けるが、名前が何処かに書かれているかもしれない。きっとそれでわかる筈だ。そう思い、少しくたびれた四つ折りの便箋を開いて、書かれている文字へと目を移す。

『まずは、この手紙を読んでいるあなたへ。お願いがあります。
 あなたが会いたいと願う人に向けての想いを、手紙に綴ってください。一言でも構いません。
 俺はどうしても彼女に会いたい。一目だけでもいいから、会いたいんです。
 その願いを叶える為に協力して欲しい。想いの力が貯まれば・・・の元に届き、会いたい人にもう一度巡り会わせてくれる。
 どうか、力を貸してください。お願いします。 』

 訳のわからない文章だった。けれどその瞬間、忘れていた感情を鮮明に思い出した。そうして読んだ文の続きに、暫く何も手に付かなくなった。
 よくよく考えてみれば、最初に開いた便箋の文字とは違う。それに紙そのものも異なっている。この宛先不明の封筒を最初に閉じたのは、今読んだ内容の手紙とは別の人物かもしれない。
 それでも、何故だろう。想いが心に残る気がした。そして、自分もまた同じ様に、伝えられなかった想いをこの手紙へ、言葉にして託したいと願った。
 その日はそのまま退社し、宛先不明の手紙をカバンに入れたまま、街の雑踏を歩く。ふと、顔を上げた先に普段なら視野に入らない文具店の看板が目に付いた。吸い寄せられるように、足が店先に向く。そしてインスピレーションが働いたというのか、淡い模様の入った便箋を手に取っていた。
 帰宅すると直ぐ様テーブルに向かい、買った便箋をに取り出してみた。ペンを握ると緊張感が芽生えてくる。紙に書く、という行為自体、何年ぶりだろう。震える気持ちを落ち着けて、静かにペン先を紙の上に落とす。

『○○へ
 生きてるか? 今も生きているか?
 人が優しくするのをいいことに、散々「死にたい」と喚き散らしてたお前の面倒を見ていた姉ちゃんが死んで、姿をくらましたお前を俺達は非難した。

 あの時は、どうしたってお前の気持ちを分かってやれなかった。わかりたくないとさえ俺は思ってた。でも今頃になって、何でお前がそう言っていたか、何となくわかる気がする。
 なあ。一度でいい。一度でいいからお前のアホ面をもう一度、俺に見せてくれ。
お前みたいなバカ野郎でも案外生きて行けるもんだと、どうか俺に信じ込ませてくれ。お前がまだ生きていたなら、きっと俺もまだまだ生きていける。
 別に言葉を交わさなくったっていい。俺が怖いなら、会うのは一瞬でもいい。
 もう一度、会ってくれるのなら俺はあの時言えなかった事をちゃんと言うよ。

 あれは、お前なりのけじめで、お前にとっての善意だったんだよな。わかってやれなくてごめん。』

 許すつもりなんて、今も無い。けれど本当は分かり合うことが第一歩だったんだ、と漸く反省する気になれた。もしも会うことが出来たなら、怒るだけじゃなくて、最後には笑い合いたい。
 書き終えた紙を四つ折りにして、元の便箋と共に封筒へ戻す。蓋を閉じると不思議なことに、どこかに消えていた数字のシールが浮かび上がり、貼り付いていた。
 13、と記されていることから、書いた人の分だけ数字が増えていくのだろう。
 何だか照れ臭いようなむず痒い感覚に、少し頬が緩む。 
 少し悩んだが、そのまま郵便ポストに投函した。宛先も差出人も書いていない。けれど書かなくたってきっとこの封筒は次の…思いを抱えた人のところに届く。そんな気がした。
「さあ、明日からまた仕事頑張るかぁ。」
 晴々と声を上げてみる。少しすっきりした胸を張って、また新たな気持ちでいつもの日常へと俺は足を向けた。


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複数人で物語を書くなら、こういうやり方もあるかな…と思い、書いてみました。リレー小説用の見本原稿です。以下が揃っていれば、文体は自由で良いかと思います

起ー
 宛名の無い封筒、入手。届くでも拾うでも見つけるでも、その時の状況を書いてもらえれば良い。

承ー
 中の手紙を読んでどう感じたか。心象描写と次の手紙を書くに至る行動理由。

転ー
 自分ならどう手紙を書くか。会いたいと思う人への思いを綴る。

結ー
 封筒に元の手紙と書いた手紙をしまって送る。

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2024/07/19 22:33
コレ読んで第一に思うことはミステリー好き? ー僕 ミステリーよりSFの方が多い。ミステリーで有名なので良く知らないけど『他殺俱楽部』?
アバター
2024/06/29 13:47
リレーなの?掌編小説として面白かったが。



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ケニー
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カテゴリ
自作小説
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設立日
2024年02月18日

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