Nicotto Town


ストーリーテーラーの集まる小さなカフェ

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星に願いを

投稿者:Litsu☆

「ねえ、パパはいつ帰ってくるの?」

ブロンドの美しい髪の少女は白いバルコニーから夜空を見上げながら言った。

「レイラ、今パパはとっても大事なお仕事をしてるのよ、だから
 お帰りになるのは、もう少し先ね。寂しい思いをさせてごめんなさいね。
 でもパパは一生懸命頑張ってるから、応援してあげてね。」
「うん、わかった、頑張れ!パパ!」

軌道上で宇宙空間における特殊環境を利用した実験を行うため、A国が造った衛星研究室ホライズン1は、
先日の未確認デブリ衝突により、わずかに正常軌道から外れてしまった。その被害で姿勢制御ノズルを
破損し、軌道を戻すことが出来ない。このままいけば15日で大気圏に突入し燃え尽きてしまうのだ。

「なぜ、わが国から救援シャトルが来ないんだ!」

ホライズン1では研究者含む乗組員たちが、顔色を変え、管制センターからの返信をまちわびていた。

「仕方ないさ、前政権は宇宙開発関連予算をめいっぱい削減してたからね。
 数日で打ち上げられる機なんて我が国には無いよ。」
「くだらねえことに予算かけてるくせに!クソッ!じゃあ、ライバル国のB国はどうだ?
 確かあそこには同等のシャトルあっただろう。」
「残念なことに、いまは代理戦争中だ。
 ま、現大統領が人道的見地からホットラインで救助要請してくれたらしいけどな。」
「え?じゃあ、うまくいったのか?」
「まあ、B国はシャトル打ち上げは承諾したよ。だがな、経済封鎖の影響で燃料が届かないんだ。」
「臨時燃料載せたタンカーは洋上で無国籍ギャング海賊団に停船させられて身動きがとれない。」
「・・なんだよ?その・・無国籍ギャング海賊団って?」
「海運妨害して世界流通を混乱させてる国際金融マフィアの手先だよ。」
「くっそー!なんでこんな時にそんなことを。」
「あいつらに命の重さなんて関係無いのさ。市場が動けば利益が生まれる・・もともと拝金至上主義
 の連中だ。出来るだけB国を締め上げたいと願ってるウォール街の駒さ。」
「このおーッ・・どいつもこいつもッ!」

室内テーブルが振り上げられた拳に八つ当たりされそうになったとき、スピーカーが鳴った。

「こちら管制センター、ホライズン1聞こえるか?」
「こちらホライズン1、なにか打開策はあったか?」
「いい知らせだ!今しがたC国のシャトルの打ち上げが了承された。」
「おおおおー!」
「現在、共産国家のC国と我が国とは関税戦争下にある。だが、関税引き下げの条件として
 C国に救援シャトルを出してもらうことで交渉が成立した。喜べ、助かるぞ。」
「ヤッホー!」
「超絶的経済破綻で共産体制が危ういC国だ、渡りに大きな助け舟、といったところだろう。
 やや旧世代の機体だが、乗組員全員を連れて帰るには十分な大きさをもっている。
 数日中に打ち上げられるよう準備中とのことだ。もう少しの辛抱だぞ。」

乗組員は久しぶりに、交代で十分な仮眠をとることが出来た。

「おやすみ、レイラ。もう少し待っててくれ。」

仮眠ポッドのひとつに写真が一枚。そこにはブロンドの髪の母子が写っていた。

「こちら管制センター、ホライズン1聞こえるか?」
「こちらホライズン1、なにかあったか?」
「落ち着いて聞いてくれ、悪い知らせだ。」
「・・・?」
「昨日、C国の国家主席が失脚した。不平をもった人民の一斉蜂起に乗じた反主流派のクーデターだ。
 体制破壊の象徴として、打ち上げセンターの施設も爆破されたようだ。連絡もとれず情報が錯綜して
 いる。こちらでもそれ以上の情報確認が出来ない。・・残念だよ・・」


白いバルコニーから見える夜空は無数の星々が輝いて見え、水平線とつながった宇宙の中心に
自分が居るような気分だった。

「レイラ、そろそろお食事の用意が出来たわよ、早く入りなさい。」

「はーい、」

再び振り返り、夜空を見上げた少女は、かすかにきらめく光の帯を見た。

「あ、流れ星!」「そうだ!」
(神さま・・どうか、パパが早く帰ってきますように・・)

「あら?どうしたの?お祈り?」

「うん、今ね、流れ星見たんだよ?だから、お願いしてたの。」

「そう・・良い子にしてれば、きっと神様はお願いを叶えてくれるわよ、きっと・・・」





おわり

アバター
2025/04/28 21:13
コメントありがとうございます♪
じつは、私も書いていて、少し涙が出そうになりました。
アバター
2025/04/28 11:54
う~~ん なんだか泣きたくなる うるっ。゚( ゚இωஇ゚)゚。



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カテゴリ
自作小説
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設立日
2024年02月18日

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