あなたの腕に触れようと、手を伸ばした。

すると・・・指先が動かせなかった。

あなたに想いを伝えようと、唇が動いた。
　
すると・・・言葉が出てこなかった。

あなたの目を見つめ返そうと、瞳を向けた。

すると・・・瞼が閉じてしまった。

あなたの名前を心の中で叫ぼうとした。

すると・・・名前がどうしても分からなかった。

あなたとの優しい日々を辿ろうとした。

すると・・・何故か思い出せなかった。

どこ？　
　
どこ？　　

どこ？

私の中に、あなたはもう何処にも居なかった。



・・・そうして、私は一粒の砂になった。

暗い浜辺に打ち寄せる、幾千幾万幾億の砂粒の「ひとつ」になって

陸と海との境目で・・行ったり来たり・・繰り返す・・・


ザザザザァ～・・・・


ザザザザァ～・・・・


明日の来ない、永劫の夜の浜辺に

それはそれは見事に美しく

蒼い月がその冷たい輝きを湛えていた。





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