Nicotto Town


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レーシームーン~眠れない夜~

投稿者:#ひろあき

夜は魔法が溶けるとき。
パジャマに着替えて、ベッドに入って、目を閉じて百数えたら、
あなただって魔法の虜。
大きな空を飛んで山を越えたり、
海の向こうの異国を旅したり、
何処かの国のプリンセスになって素敵な王子様に恋したり、
不思議の森ではらはらどきどき冒険したり・・・
それから・・・え~と・・・え~と・・・エトセトラ、エトセトラ。
夜は、老若男女、金持ち、貧乏人、問わず、
解けた魔法を万遍なく、そっと町中にふりかけます・・・。
けれど今夜は、ああ、なんてことでしょう。
夜いっぱいに溶けていた魔法が、西の丘の上にある真っ赤な屋根の家の
天窓へ、みんなみんな、流れ込んで行きます。
鮮やかな栗毛の女の子の眠っている、部屋の中に・・・。

「おかしいなぁ」
三つ目の小さな溜め息が、バ-スデイさんの部屋の中にきえてゆきました。今夜は、どうしても寝付かれないのです。
ちゃんとパジャマに着替えて、ベッドに入って、百数えたのに。
なのに・・・眠れない。
「おかしいなぁ」
とじていた目を開くごとに、目がさえて行くのです。
女神の優しい吐息のような心地好い風が、西向きの窓から入ってきているというのに・・・。
「西風・・・!?」
バ-スデイさんははっとして窓の外を見ると・・・やっぱり!
西の丘から流れてくる風が、焼き立てのハニ-ケ-キのような柔らかくて甘い歌声を、何処かから運んできているのです。
その歌声を聞いていると、何だか胸の奥がキゅンと締め付けられるような、まるでまるで、そう、大好きな恋人を待ち侘びているような気持ちになるのです。


月の鏡 月の鏡
この海の向こうが見えるなら
あの人の寝顔を映して欲しい
それがかなわぬ願いなら
あの人のいる町を映して欲しい

けれど、ほんとの願いは
私の想いがどんな魔法よりも優るなら
私を風にして欲しい
私の姿にあの人が気付かなくてもいいから
この広い海を越えて

あの人に逢いにゆきたい


「誰が歌っているんだろう」
興味津々、ベッドから飛び降りると窓の側で耳をすませました。
けれど町の誰かの声でもないようです。バ-スデイさんは聞き覚えがありません。
目をみみずくのようにひらいて、西の丘のほうを見てみました。
けれど大きな月が頭をねむそうにもたげながら、丘でそよぐ草の波を照らしているだけです。
バ-スデイさんの心は、そのまま、東の空がラムネ色に染まるまで、マンボウのようにゆらゆら部屋中を漂っていました。・

アバター
2025/05/11 15:51
ファンタジックな情景が浮かんできます♪



管理人
ケニー
副管理人
-
参加
受付中
(今すぐ参加可能)
公開
全公開
カフェの利用
朝10時~夜24時
カテゴリ
自作小説
メンバー数
16人/最大100人
設立日
2024年02月18日

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