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続・春の季節

投稿者:Litsu☆

次の日、わたしは浜辺へ行くことにした。

「明日もここに居るから。」と、言われたとき‥わたしは何故かすごく安堵した。
ただむかしの『恋人』に似てるだけの人に、また会いたいと言って貰えたからなのか?
ああ‥そうか。
知らないうちに恐れてたんだ。‥また、誰かが自分のもとを去ってしまうことを。


この町は過疎だ。普通にしてても去っていく人の方が多い。中央はそれなりに人影を見るけれど
他はもう閑散としたものだ。いずれは人口減の問題が町の存続そのものを揺るがすに違いない。
そもそも?見ず知らずの相手との口約束だ‥。 守られる保証もない‥
社交辞令の一環だったとして何の不思議もない。ましてや時間厳守を問われるアポイントでもない。
二言三言会話しただけの行きずりの相手だ。べつに捨て置かれてもおかしくない。

‥それでも次の日、わたしはこの寂れた浜辺で彼を待つことにした。

バス停から浜に向かって歩きはじめると、「!」 ‥彼の姿があった。
 
「アラ、ちゃんと来てたのね♪」

「うん、実は30分くらい前から此処に来てたんだけど。」

「嬉しい、ほんと半信半疑だったから‥」

「‥そうか。」

「うん」

さざめく波の音を聞きながら、わたし達は夕暮れ時の海をただ、見つめていた‥。
遠くで海鳥の鳴き声が、微かな余韻を伴ってオレンジ色の空に消えていく。
二人の影法師も沈黙の間にすっかり長くなって、やがて砂の浜に溶けて無くなりそうになる。


「僕はこういう約束はあまりしないんだ。仕事でも無いし、特にこういう町ではね。」

「へぇ‥♪」

なんだか心にしみた。

‥そうだ。

この『約束』という言葉がどれほどわたしにとって最果ての彼方に消えてしまっていたか?‥
もうその言葉自体、wikiの意味書きに「果たされないこと」の一文を書き加えるべきだと思うくらい
ひょっとしたら世界には果たされない『約束』のほうが遥かに多く、果たされる『約束』など
そもそも稀有な奇跡でしかないのかと思っていた。きっと天上の神との『約束』でさえ、人はまだ
叶えてもらってはいない。少なくとも皆がそう思っていることだろう。

「‥じゃあ、なんでこの約束はちゃんと守ろうって思ったの?」

「僕が此処で君と出会ったことも、なにか運命のような気がする‥。」

「ふぅ~~ん」

それからわたしは彼と少し話をしてみた。
驚いたことに彼の話しぶりや受け答えが、たしかにむかしの『恋人』に似ていた。
理屈っぽくてw、子どもっぽくてw、中心に優しさがあって‥♪ 
色彩で言うトーンが似ていた。 

‥どう‥思えばいいのだろう? 

わたしはまるで夜のバーで愚痴るように、その『恋人』についての話を幾つかしてみせた。
全然関係ない他人の元カレの話など、聞くほうからすれば、それはもうウザさの極みだろう。
それでも構わずわたしはしてみた。ほんとうに‥よく付き合って聞いてくれたと思う。

「君にそこまで想ってもらえてるなんて、その彼氏さんは幸せ者だね。」

「‥‥そう?」

「そう思うよ?」


わたしは初めて出会った彼に、いきなりかつての『恋人』に似ていると伝えた。

そして彼も、わたしとの出会いに「運命的」なものを自覚している‥


  【そんなことが現実で起こり得るだろうか?】


一つ、間違いなかったのは、わたしは彼に逢って「ホッ」としている、という事だ‥。
その気持ちだけは、偽りとすることは‥‥どうしても出来なかった。




.




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ケニー
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カテゴリ
自作小説
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設立日
2024年02月18日

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