了・春の季節
- 2026/04/09 21:33:39
わたし達は何度も浜で会った。
次の日も、その次の日も、お互い示し合わせるわけでもなく、そこに行くとそこで会えた。
彼について確信があったわけでもなんでもない。ただ、その浜は二人の共通のサインとなった。
これは仕方のないことだった。‥‥そう、これは仕方のないこと。
わたしは彼にもと『恋人』の影を重ねている。容貌の雰囲気もそうだったけど
正直、何度か会って話をするたびに、もと『恋人』と話しているような錯覚さえ覚えた。
彼の語り口、ちょっと無口になるところ、中心に見えるピュアな部分‥どれもこれも
かつて、わたしと共に過ごしたあの時間の延長線上に見える景色と、ほぼ近いものだった。
これも仕方のないことだった。‥‥そう、これも仕方のないこと。
言われなくても、自分が未練がましい、みじめな振る舞いをしているという自覚はある。
恥ずかしげもなく、過去にしがみつき、後ろ向きにしか進めない哀れな愚か者。
そんな自分がキライだった。‥‥でも‥‥
この安堵する自分の気持ちに噓はつけなかった。この彼はもと『恋人』じゃないのに
どうしても、なつかしさや癒しをそこに求めてしまう。そんな自分の甘さを止められなかった。
もう自分でもどこに行こうとしてるのか?さえ見えなくなってしまっていた。
ただ‥‥少し違うところがあるとしたら、そこに「束縛」を感じなかった。
それは良い悪いということではなく、親しさが高じて来るとどうしても顔を出す感情の一面だ。
この人を自分だけのものにしたい、ひとり占めしたい、わたしだけは特別であって欲しい。
そう言うわがままな感情だ(苦笑)
わたしは何がしたかったのだろう? ‥いつしか無意識のうちに、その感情に苛まれたのかも‥
言葉の端々に、相手の気持ちを試すようなトラップ的なやり取りを何度もするようになった。
そういう自分がだんだんと、またキライになっていった。
その日、夕暮れに近づく浜辺て、彼はわたしにこう言った。
「‥‥だって、‥友だち、だろ?。」
(‥ザザザ~‥ ‥ザザザ~‥ ‥ザザザ~‥)
‥波音がいっそう大きく、わたしの頭に響き渡ってきた‥それ以外は聞こえず、
沈黙しているにも関わらず、波音だけが‥‥いっそう‥反響して、返事をためらわせた。
「そうね‥‥。」
わたしは少しうつむいた‥
薄っすらと赤面してるかも知れない自分の顔を、絶対に見られたくなかったからだ。
いったい何がしたかったのだろう? こんな彼に、わたしはいったい何を求めてるのだろう?
まるで他人事のように、自分でも自分が分からなくなってしまっていた。
「でもッ、僕は君の力になりたいんだ。」
幾度となく聞いた同じフレーズ‥でも、彼の言葉に恐らくウソはない、それはわたしにも分る。
「‥‥それって、誰に対しても力になりたいから?」
「そうじゃない。」
「【わたし】だから‥‥力になりたいってこと?」
「うん。」
「‥‥【わたし】だけ?」
「うん。」
宵闇は下向きの表情をやんわりと隠してくれる。その変化を彼に悟られたのかどうか‥‥?
一文字に結んだわたしの口元が、すこし和らいだのを‥気付かれはしなかったろうか?
きっと、わたしはわがままだ。その言葉にほんの少しこころが安堵する。
(‥‥ほんとにほんとに、わがままだ。)
しばらくはこの波音を聴きながら、ずっと二人きりで居たい。‥‥そう、思った。
.

























でもその場合、主人公がなぜそこまで惹かれてるか?
普通じゃないべつの理由が要りそうですw
今回は、やんわりとしたストーリーにしたかったので‥(o^―^o)v
《彼》がかつてDVが酷かったけど
記憶喪失になってしまった
《元カレ本人》だったら面白かったなぁとか思った。