Nicotto Town



年末年始に腐ってみました 7

和也3

「おら、キリキリ歩けよ。トーヤが待ってんだろ?」
一旦、食事の為の休憩を挟んでまた歩き出したのだが、連れのこいつがまたへたばった。
体格はおれとそんなに変わらないようなのに、体力のない奴だな。
「無理を言わないで下さい。私はあなたのように野蛮にはできていないんだ」
このやろお…いちいちムカつく奴だな。
その時、おれ達が歩いてきた方向から砂煙が近づいてくるのに気がついた。

その砂煙は、二頭立ての馬車の列だった。
それが慌ててよけたおれ達のすぐそばで停まると、一番前の馬車にいた男がおれ達に声を掛けてきた。
つか、この世界にも普通に人間が住んでたんだな。
「あんたたち、もしかしてツアーの参加者かい?」
その問いにそうだと答えると、あの町に向かっているのかと聞かれたので、それにもそうだと答えた。
「あの町は結構近く見えるけど、歩いて行くとなると着くのは夜更けになるぜ」
その男の言葉に、連れがめまいを覚えたように頭を手で押さえた。
それを見て馬車の男は苦笑すると、
「まあ、しょうがねえやな。
ツアーの参加者には親切にするようにとお触れも出ているこったし、いいよ馬車に乗んな」
そう言ってくれた。
その言葉に合わせて、最後尾の馬車から違う男が降りてくると、おれ達を招き入れてくれた。

馬車の中は、沢山の荷物でいっぱいだった。
ほとんどが籠に入ってたりまとめて縛ってあったりで、中身はよく分らないが。
「あのさ、こんな言い方失礼かもしんないけど、あんたたちって何してる人?」
人…っつっていいのかどうか迷うとこなんだけどさ。
目の前にいるのは、なぜか青い魚だし。
しかも空中に浮いてるし。
しかもシルクハットかぶってステッキ持ってるし。
「ああ、彼らは商人なんじゃよ」
その魚が、耳障りな甲高い声でしゃべる。
「今はあっちの町からこっちの町へ、商品を運んでる途中なんじゃ。
そいでわしは、あんたたちと同じくそこに便乗させてもらってる賢者である」
そう言って魚は胸を張…ろうとして、くるりんと一回転した。
なんかちょっと…目まいが

魚との話はそこで打ち切り、地図を引っ張り出す。
自分達のいる地点が地図の真ん中で赤く点滅し、地図の端っこ…遠矢達のいる方向に白い矢印が点滅している。
(遠矢、今頃どうしてる? お前が一緒なら、どんなに大変でも楽しい旅になったのにな)
そんな事を考えて、なんとなく遠矢の頬に手を滑らせるように地図をなでた…ら、
地図が動いた。
更に手を滑らすと、それに合わせて地図が違う場所を映し出す。
どええ? これ、タッチパネル? ただの紙みたいなのにどーなってんだよ。
しかも、指で広げるようにすると、拡大もする。
おれは遠矢のいる方向を指し示す矢印の方へ地図を移動させ、さらにその場所を拡大してみた。
いた!
遠矢がなにやらただっ広い草原みたいなところを、前を行くトーヤとやらに何か言われながら一生懸命歩いている。
別れてまだ一日も経たないのに、なんだかひどく懐かしい。




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