Nicotto Town


モリバランノスケ


古道の狂言


今日は、朝から雨降。天気予報では、日本列島の南部、広範囲に線状降水帯が発生して、局地的な大雨になる模様である。我がFamilyは、彼女(ウサコ)の居ない寂しさは在るけれども、何時もの様に、Breakfastを楽しみ、今終わった所だ。

私は、心のなかで、(早朝散歩は、どうしょうかな)と、考えている。雨の嫌いなチャムは、同行しないだろう。窓から望まれる外の様子では、今は小康状態の様だ。私は、(早い方が良いだろう)と判断して、カツパを着るなどの雨の備えをして、ログハウスのドアを開けた。草木樹木達に挨拶をする。幸い今は、雨は降っていない。

通り過ぎ行き交う、樹木達に、(おはよう御座います)と、挨拶しながら、このところ気に入っている場所を目指す。そこは、古道楠木兄弟が、豊かに枝を繁らせた霊感に満ちた溢れた場所。我が敷地の南西を走る古い街道上にある。

雨模様の日。晴れた日とは、趣を異にした別の深い風情がある。私は、持参したロッキングチェアーを拡げた。ゆったりとした気持ちで、静かに腰を下ろした。兄弟に、(おはよう御座います)と挨拶を。彼等も(おはよう、オハヨウ)と。

私は、目を閉じる。そして、以前に、古道楠木兄弟から聴いた、ある話に思いを馳せ始めた。

○それは、今から700年程前の、安土桃山時代の終わり。ある日の事、この古道を抜けて諸国を旅する、狂言師の親子が、古道楠木兄弟の下で小休止した。二人は、湧き出る清水を、手ですくってさも美味しそうに喉を潤している。

そして、辺りの手頃な岩に腰を下ろした。腰に下げた布で、額の汗を拭っている。二人は、何やら話し始めた。

息子 (父上、昨日の部落では、随分と、我々を
   歓迎してくれましたね)
父親 (丁度、祭りの最中。能楽堂もあった。
   我々の狂言を、本当に楽しんでくれた。
   苦しい日々の暮らしでの僅かな娯楽だ)
          ・・・・・・・・・・○

それから、古道楠木兄弟は、親子と色々なことについて話し合った。私は、(彼等の言ったことで、一番心に残った事は?)と、聞いてみた。

古道楠木兄は、(そうだな〜)、と少しの間考え込込んでいたが、次の様に話し出す。

○それは、喜怒哀楽を表現する、狂言の真髄に付いてである。(肉体と言う衣をまとった人間には、喜怒哀楽を表現するのはなかなか難しい。だから、我々の狂言を見聞きして発散しているのだ)と、語っていた事だろう。○

私は、それを、聞きながら、人間社会と言う足枷の中で、心の底からの喜怒哀楽の表現は至難の技だろうな、と考えている。

そして、当時の最高権力者、信長、秀吉、家康でさえ狂言を好んだのみならず、自身でも演じた理由もそこに在るのだろうとも、考えている。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.