Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


トノスカとマカ 18

トノスカは町の人たちに神父の背中のタトゥーを半分でも一瞬ではあったが、何人かには見せることが出来たと思ったし、教会の外までペスカトーレが一人で神父を追うことは危険だと判断した。

トノスカは床に叩きつけられたときに腰を強打した痛みに堪えながら立ち上がると、町の人たちに向かって息を切らしながら言った。

みなさんには、怖い思いをさせてすまなかったと思っています。
ただ、おれたちは、強盗に来たわけじゃない。この町の人たちに神父の正体を知らせるために来たんだ。
やつは神父なんかじゃない。
ストロベリーのボスなんだ。

町の人たちは怯え切った目で黙ってトノスカの話を聞いていた。

アーシャンが立ち上がってゆっくりと銃を床に置くと、その後を引き継いだ。

みなさんもご存知と思いますが、私はこの町で教師をしています。みなさんが信頼しているあの男はみなさんをだましています。

そう言ってアーシャンは上着の懐からステーキのニセモノのレシピを出して、みんなに広げて見せた。

これはステーキという危険なドラッグの製造方法です。
今、ストロベリーとCCBはこのレシピを手に入れようとして躍起になっています。
先日、ポカの町で起きた銃撃戦もこのためです。
私たちはある場所でこのレシピを発見し、燃やしてしまおうとしました。
しかし、ストロベリーのやつらに見つかって、今、私たちは彼らに追われています。
こんなものがギャングたちの手に渡っては、キースランドは間違いなく壊滅してしまうでしょう。
今、ただでさえ、ストロベリーが売りさばいてるドラッグのせいで町は少しづつ蝕まれています。
先日、私の学校でも中等部の子どもが一人、スカッシュを隠し持っていました。
ストロベリーはドルコの町の人々からドラッグで搾り取れるだけのお金を搾り取って、町を壊滅させました。
いずれ、キースランドもドルコのような廃墟になってしまうかも知れない。
私たちは、ストロベリーの本当の姿をみなさんに知って欲しいのです。
あなた方が毎月この教会に納めているお布施もストロベリーの財源の一つになっています。

いいですか、神父はストロベリーのボスです。
どなたか、彼の背中のタトゥーを見たはずです。
何が描かれていましたか?
彼の背中にあるのは、、

アーシャンがそこまで言ったとき、

動くんじゃない!!!

と、声がして、祭壇裏から突然大勢の銃を持った保安官たちがなだれ込んできた。
同時に教会の正面の扉が開いてそこからも大人数の保安官たちが突入してきた。

アーシャンもトノスカも、ペスカトーレとマカもあっという間に保安官たちに祭壇上で取り押さえられた。
アーシャンとトノスカとペスカトーレは後ろ手に手錠をかけられて、逮捕された。
マカはまだろくに立ち上がることが出来ず、保安官たちに担がれて教会の裏口に停めてあった保安官の馬車に乗せられた。

祭壇から裏口に連れられて行く時、アーシャンはもう一度、町の人たちに叫んだ。

だまされちゃダメだ!
この教会がストロベリーの本体なんだ!

マカはそのまま診療所に連れていかれて、3人はキースランドの収監所の牢屋に一人一人別々に入れられたが、保安官の一人がペスカトーレの手首の骨折に気付くと、ペスカトーレも診療所へ連れて行かれた。トノスカとアーシャンも神父にねじられた手首が痛かったが、軽い捻挫程度だった。
ペスカトーレは骨折した手首の治療を受けてすぐに牢屋に戻されたが、マカはその日は診療所に泊まることになった。

神父はマカに発輕を食らわせたのだ。
発輕とは非常に短い距離から最小限の身体の回転で繰り出される強烈なパンチで、内臓をぐしゃぐしゃに破壊してしまう程の威力があった。マカは天性の反射神経でとっさに腹部を引いてショックを逃がしていたので、内臓までは破壊されなかったが、それでもダメージは大きかった。
発輕は遠い国の格闘術で、そんなことが出来るのはこの国では神父しかいなかった。

マカは一晩中、腹部の痛みに苦しんで、ようやく翌日の朝に気を失うように眠りについた。

トノスカたち3人は、それぞれの牢屋の中でやはり眠れずにまんじりとしていた。

次の日、保安官による取り調べが一人一人別々に行われた。
3人とも、正直にそのままを話したが、保安官たちに信じてもらえなかった。アーシャンの持っていたニセモノのステーキのレシピは没収され、このドラッグで金儲けを企む新たなギャングだと勘ぐられた。

嘘をつくと、罪が重くなるぞ。
素直に吐いちまったほうが身のためだぜ。

3人はそれぞれ同じことを言われた。
神父はそれほどまでに町の人々から信頼されていた。

その翌日、ようやくマカは退院できて、牢屋に入れられた。
まだ腹は痛かったが、だいぶマシになって歩けるようにはなった。

マカも独房に入れられると、またそれぞれの取り調べが行われた。
しかし、4人とも事実をそのまま言って、そしてやはり保安官たちには何も信じてもらえなかった。
3日目も同じことが続き、トノスカもマカもペスカトーレも保安官たちも同じことの繰り返しにイラついていた。
アーシャンだけが落ち着いていた。

拘留されて4日目の取り調べの時に、保安官がトノスカたちに言った。

おい、もう隠し立ては出来ないぞ。国家秘密警察にレシピと捜査要請を送っている。すでにスバスニアンに届いて、今日、出発したと電話があった。あと2、3日でここに秘密警察が着くはずだ。
秘密警察に取り調べられたら、何も隠し通せないぜ。
今のうちに吐いたほうがいいんじゃねえか?

首都のスバスニアンからキースランドまで、馬車で2日はかかる。
秘密警察の取り調べ官には嘘を簡単に見抜いてしまう男がいて、その男の取り調べを受けたらどんな凶悪犯でも全てを洗いざらい話してしまうと噂を聞いたことがあった。
トノスカたちは内心、その方がよっぽど良い。これでストロベリーの正体を暴露出来ると期待した。

しかし、その日の夜、収監所は襲撃された。




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2024/09/02 01:34
> せんちゃんさん
ありがとう〜!
DCから帰ってきたので、またちょっとしたら再開します〜!
アバター
2024/08/27 07:52
おおお・・・。一気に3話読みました^^ ドキドキです。



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