生きるとは(7)
- カテゴリ:日記
- 2026/10/27 11:06:18
常縁は、城の窓から、下界を眺めている。そして、入り込んでくる、ひんやりとした空気を、肌で感じていた。しかし、体の芯、奥の奥では、盆踊りの熱気が、燃えたぎっている。その時、ふと気がつくと、暗闇の中から、か細い光の線をたどりながら、一匹のホタルが常縁の指に止まった。見ると、かすかに橙色の光を、点滅させながら、とても憔悴しきった様子である。
常縁は、そっと、蛍に向かって呟く。
「おや、いつたいどうしたの?。おどりにいかないの!」
蛍は、疑いと拒絶の気持ちを滲ませながら、ちらりと常縁の方を見ながら、
「さっきまで、踊っていたのだけれど、ちっとも楽しくなくて。逆に、気持ちがどんどん沈んでいくの」と、囁き俯いた。そして、体を小刻みに震わせている。
しばしの沈黙があった。しかし、じっと見つめている常縁の眼差しに促されたのか、心の奥から絞り出すように、か細く小さな声で、語り始めた。
「私は、遠い国からさらわれて、川の下流にある街に連れてこられたの。そこでは、毎日少しの休みもなく働かされて、言葉では言い表せないほどの、ひどい生活を、強いられたのです。ある日、やっとのおもいで、そこから逃げ出し、川伝いに歩いてきて、ここで行き倒れたんです。だけど、心が重たくて、どうしてもあの世に渡ることができません。~~私は、このあたりをさまよい続けている、御霊なんです~~~。
毎年、盆踊りで、心を軽くしょうとしているんだけれど、今年も駄目でした~~~~~」
蛍は、暗い表情を隠そうとせずに、寂しそうに語り終えた。
常縁は、彼女の言葉を、心の奥の深い所でうけ止めながらしっかりと聞いていた。
そして、慈愛に満ちた優しい眼差しを注ぎながら、言葉を紡いだ。


























