ファイブスターズ(仮)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/04/15 17:20:27
この物語は、剣の世界の
そして、知られざる地での、冒険者達の戦いの記録である。
始まりは新王国暦505年暮れの月。
小雪舞い散る日の深夜の出来事だった。
“賢者の国”として名高き国・イルミナ。
王都であるイルミナは、八つの尖塔と城壁とで囲われたエイトサークル城。
もう一つは『賢者の学院』とも呼ばれ、魔術師ギルドの本部でもある三つの塔が目印とされている。
そして、それを囲むように五大神の神殿が建てられている。
この国の国教は、知識を司るラーダ神だが、
残る四柱の神、即ち、大地母神・マーファ、商業と幸運の神・チャ=ザ、戦神・マイリー、
そして至高神であり法と秩序の神でもあるファリスも、
それに等しいくらい信仰されている。
「…降ってきたな」
ファリス神殿の門番の務めを果たしている、二人組みの男の一人が小さく呟いた。
「ああ寒っ。早く交代の時間が来てほしいぜ」
「おい、そんな失礼な言葉は慎め」
篝火の下で、不審者が現れないかどうか目を光らせている、
もう一人の男が、ボヤく相方をたしなめる。
「けど寒いのは事実だろうが。…畜生、一刻が長く感じらぁ」
「だがこれも大切な務めの一つだ。疎かにはできぬぞ」
「…」
あくまでも己の役目に忠実な、短髪の男の横顔を見て、
ボヤいた男は心の中で毒づいた。
(ちぇっ。やっぱり俺、宗旨替えしようかなぁ)
程なくして、神殿の入り口から小さな光が何度か照らされる。それは交代の合図だ。
「やれやれ、やっと交代か。これで眠れるぜ」
「失礼な言葉は慎めと言ったはずだぞ」
「へいへい」
そんなやり取りをしながら二人は、神殿の中へと消えていった。
その間、一人の人物が、建物の影からファリス神殿へと走っていく。
その人物-フード付きのマントを纏っているので、男か女かわからない-は、
神殿に入るでもなく、何かを置いた後、まるで鼠の様に去って行った。
「!?」
その直後、新たに現れた別の門番たちが目にしたのは、
厚手の布にくるまれた幼子だった。
「…これは?!」
門番の一人がそれを抱き上げて、思わず驚きの声を上げる。
一見人間の幼子に見えるが、その耳は人間のそれと違い細長かった。
「…ハーフエルフの赤子、だと?」
「間違いないだろう。…しかし、何故ここに?」
「わからん。…ここはフレイア様にお伺いしよう」
赤子を抱いている門番が向かった先は、一人の高司祭の寝室である。
周りに気をつけながらも、鋭く数回扉をノックする。
「…何事です?」
扉越しに聞こえる静かな声に、門番は応える。
「フレイア様、お休みのところ失礼します。急を要する事態が起きまして…」
「少々お待ちなさい」
少しの間の後、扉が開き、一人の女性が姿を現した。
フレイアと呼ばれたその女性は、
艶やかな-しかし肩口で無造作に切っている-黒髪に黒い瞳、
硝子細工のような繊細な顔立ちで、
来ている服がガウンでなければ、まさに高司祭と呼ぶに相応しい品の良い人物である。
「その赤子がその『急を要する事態』ですか?」
「は、はいっ」
とても寝起きとは思えない、竪琴のような澄んだフレイアの声に、
門番は思わず身を固めて答えた。
「…その子を私に」
彼は言われるままに、赤子をそっと差し出した。
フレイアは優しく受け止めた後、赤子を静めるために小さく身体を揺らしだした。
「…しかし、ハーフエルフの捨て子なんて、一体何故…」
独り言のように呟く門番に、フレイアは静かに答える。
「恐らくは…“取り替え子”でしょう」
「“取り替え子”!?」
場所と時間帯にもかかわらず、門番は大声を上げてしまった。
それを余所に、フレイアは言葉を続ける。
「…ただでさえハーフエルフは迫害される身。
増してや人間同士で生まれた子供が“取り替え子”だとしたら…
もし、貴方がこの子の親だとしたら…一体どうしますか?」
淡々と、しかし重みを感じさせるその言葉に、門番はただ呆とするだけだった。
「この子は私が育てます」
少しの間をおいて、フレイアはそう告げた。
「な…っ?!そ、それはなりませんっ」
「ではこの子を見捨てろでも?」
「い、いえいえ。仮にも『黒の聖女』と呼ばれた貴女が“取り替え子”を育てるとなると…。
他の神殿に預ける方がよろしいかと」
「それは過去の話です。
これはきっとファリス神の導きだと私は思います」
慌てる門番の言葉を、フレイアは断として遮った。
「…」
「お行きなさい。貴方には貴方の務めを果たしなさい」
「か、畏まりました」
足早に去っていく門番を見送った後、フレイアは、赤子と共に自室に戻る。
「…新しい寝台が必要ですね」
優しげに語り掛ける彼女の顔は、まさに母親のものであった。
「…女の子、ですか。…そうですね…ファリシア。
そう、ファリシア。聖ファリスの御名にかけて、私がこの子を立派に育てます」
-後に『聖女の娘』と呼ばれる彼女の誕生した時である。
続きを楽しみにしています。
彼女と物語の成長を見守るとしましょう。
この小説の続きは、出ますか?
また来ます。 (*・ェ・*)ノ~☆