がんばるわけ
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/09 14:48:19
才能の無い人間は努力するしかないと人は言う。
努力をし続けるのも才能なんじゃないかって俺は思う。
つまり、今の俺は持てる才能をすべて使っているってことだ。
こんな日差しの強い日にもくもくとグランドをダッシュしている。
クラブの顧問の先生の笛の音が短く高い音で鳴り響く。
やべぇ、もう次が俺の番だ。呼吸はまだ整ってないんだぜ。
ちきしょ。苦しいなぁ。
だいたい、俺は何をやっても長続きしないタチなんだ。
三日坊主ってのは俺のためにある言葉だね。
当然、勉強は長続きしない。
TVゲームもエンディングはほとんど見たことないんだぜ。
何をやっても中途半端なんだよな。
お袋から、シャンとしなさいとかいわれるけど、『シャン』ってなんだ?
そんな俺が、陸上部だけは休まず続けている。
だけど走る才能なんて皆無だ。
速さだって部活の中でも下から数えたほうが早い。
当然、選手として出ることは出来ないってわかってる。
それでも、俺は部活で走る。走り続けるんだ。
走るのが好きかだって?まぁ嫌いじゃないけど、一番じゃないな。
練習は辛いし、先輩は容赦ないし、先生は厳しいし。
やめよう。今日こそやめようって何度も思った。
でも、そのたびに心の奥から一つの映像が浮かび上がるんだ。
『キミの走っている姿はなかなかカッコイイよ』
キリシマ先輩は俺に向かって笑顔でそう言ってくれたんだ。
言われた俺は、そのときどんな顔をしていたんだろう。
憧れの先輩にそんな事を言われた状況を想像して欲しい。
もし写真で撮られていたら、机の奥底で封印をしておく事は決定だ。
もちろん彼女が俺に対して特別な思いなんて無いのは知っている。
それでも、
俺は彼女に俺の走っている姿を少しでも見てもらいたいんだ。
かっこいいってもう一度言って欲しいんだ。
追いかけるんじゃなくて、並んで走れるようになりたいんだ。
俺のこの気持ちだけは中途半端なんかじゃないって証明したいんだ。
だから、俺は才能を使い切ってでも走るんだ。
やめるわけにはいかないよ。
こういう奴になりたかったから書いた物語なのかもしれません。
誰かのために 自分のために 一生懸命になっている人って
ステキですw
中学の時、息子の担任の先生が 話してたことを 思い出した。
ぅん・・続けられることが一つでもあるって いいよね