【お題小説】チョコ
- カテゴリ:小説/詩
- 2011/01/20 14:35:22
『ケンジ!今年はチロルでいいかな?』
小学生からの幼馴染で近所に住んでいるサナエが教室に入るなり俺に言ってきた。
今日は、2月13日だ。なるほど、義理チョコか。
毎年、なんだかんだとチョコをくれてたが、今年は10円チョコってわけだ。
『あ、ムライ君来た!じゃ、そういう訳でゴメンねー』
ムライとサナエが付き合い出したのは去年のクリスマスからだ。ムライがプレゼントと一緒にサナエに告白をしたんだ。
体育祭でも、修学旅行でも、うまくきっかけが作れなかったムライはとうとう俺に泣きついて相談しにきたのが12月の初めだった。
夜の公園で寒い中に3時間もヤツの話を聞かされた。
1年の時からサナエが好きだったとか、サナエが行きたくなるようなデートスポットはどこかとか、サナエは休日は何してるとか、何色が好きかとか。
いくら幼馴染でもそんな事まで知るか!
まあクリスマスが最大のチャンスだとアドバイスして、サナエには当日の予定をそれとなく聞いておくと約束をした。
もう、いいかげん公園は寒いから帰りたかったしな。
最後にムライは
『実を言うと、オマエがサナエちゃんの彼氏かもってすげぇドキドキしてたんだ。でも、やっぱり相談して良かったよ。ありがとうな』
なんて、爽やかに笑顔を見せやがった。
その時の胸の痛みは今でも忘れない。
別に俺とサナエは付き合ってはいないし、過去にも付き合っていない。単なる幼馴染の腐れ縁で高校まで一緒になっちまった。
ただ、それだけだ。他には特に何もねぇ。
とりあえず、ムライとの約束を守るためにクリスマスの予定やら、行きたい所はないのか等をサナエにリサーチをした。
最初は変な顔をしていたサナエだったが、あるときから急にニタニタしていた。
『ケンジぃ?何をたくらんでるのぉ~?』
なんて聞いてきたが、ムライの顔を立てるためにも当日まではすっとぼける事にしていた。
Xデーの2日前、サナエがウチに乗り込んで来た。ズカズカと俺の部屋に入り込んできて大きな声で叫んだ。
『ムライ君から24日にデートに誘われた!!私の行きたかったショッピングセンターだって。なんでケンジにしか言ってない事をムライ君が知ってるの?』
なんでって、そんな事いえる訳がない。俺は知らねぇなと横を向いた。
しばらくの間沈黙が続いた。俺は一度もサナエを見なかった。
サナエはそっか・・・と呟いて、立ち上がった。
『ケンジはそれでいいんだね。私、ムライ君と出かけてくるよ』
そう言って、サナエは部屋のドアノブに手をかけた。俺はそこでやっとサナエの方に顔を向けて目で見送った。
サナエは少しだけ俺の顔をみて
『バーカ!ケンジのいくじなし!』
と捨て台詞まではいて部屋を出て行った。
バカは解るが、いくじなしってなんだよ。
その後の事はさっき言った通りだ。夜になって、ムライから歓喜の電話をうんざりしながら聞いた。ムライは『オマエのおかげだ有難う』と最低20回は叫んでいた。
2月14日は、いつもと何も変わらない日として過ぎて行った。クラスの何人かは女子からチョコを貰っていたようだ。ムライもその内の一人だろう。
俺の鞄には教科書と筆記道具以外は何も入らないまま、下校することになった。
家の前まで来ると、サナエが一人仁王立ちし待っていた。
『ケンジ!遅かったじゃない。誰かから校舎裏でチョコでも貰ってたの?』
うるせえな。掃除当番だったんだよ。
『はー、かわいそうね。そんなかわいそうなケンジに私からお恵みをあげるわ』
チロルチョコだろ?だったらいらねえよ。かえって哀れじゃないか。
『さすがにチロルじゃかわいそうだからさ。板チョコにしてあげたわ』
あんまり変わらねぇなあ。
『ふふ、じゃぁもう一つオマケをつけてあげる』
サナエは可愛らしくラッピングされたチョコにチュっとキスをして俺に手渡した。
『キス味のチョコだよ。うれしいでしょ?それじゃあーね』
そう言うとクルリと背をむけて、暗くなりだした道を走って行った。
何をやってんだ。アイツ。
玄関扉を開けながら、俺はすこし笑っていた。
部屋に戻ったら、とりあえずキス味のチョコっていうヤツを頂くとしようか。
拝読させていただきました。
なんだか可愛い作品だな。と感じて読んでいました^^
続きが読みたくなります。
いいですね。
男子って感じがします。
そして、その彼の心情をまるで書かないしゅーひさんの、否、違う。主人公ケンジ君の、チョコの包み紙を破る顔を想像してしまいました。
甘いマスクしてるんでしょうね~
キス味のチョコはケンジさんやっぱりうれしかったのかなww
ムライは失恋しちゃうんでしょうか?
続きが気になりますね^^
うんうん^^青春だねぇw
甘酸っぱいw(´∀`*)ウフフ
ムライくん、可哀相という声が多いと思うので、まぁ、若いってこういうこともあるよね^^といっておこうw
きっとムライくんにはこのあと、慰めてくれる可愛い女の子が登場するに違いないw
バレンタインかぁ...(´Д`)ハァ…
もうすぐニコタもくるよ...またマッチングイベントだよ(´Д⊂グスン
楽しみだけど、切ないなぁ(ノД`)シクシク
学生時代を少し思い出しました♪
好きな人?が絡んでくると断れなかったり仕方なくってあるよね。
でもやっぱり気持ちには嘘付けなくて・・・ムライ君には悪いけど
このまま去ってほしぃな~、、、残酷かな;
男の人は嬉しいのかしら?!
女の姿をした、男かも知れない私には・・分からない~ あはっ♪
(私もちょこですのでーw)やってまいりました♬
甘酸っぱーい いちごミルク風味の小説に
にこにこしながら 読んでしまいました♬
これって、しゅーひさんの 実体験に基づいてたりします?w
その後、恋に破れるであろう ムライ君は
ちょこが優しく慰めてあげましょう~♬(。→‿←。)ニャハ♥
で、チョコ シーズン2 ~ムライの逆襲~は、いつ発売ですか?ヽ(´ー`)ノ
完全にあて馬だよね~^^;
残酷だ、女って怖いって思わずにはいられない><
部屋に戻った後の・・・チョコをみて、開けて、味わうときの彼の感情が
マジで恋する何秒前(わ~懐かしい)のようで・・・
読んでるこっちもなんだかな気分になっちゃいますね☆
来月はバレンタインデーかぁ 早いなぁ*。*
ムライ君のその後にに同情してしまいますw
普通のラブ(手前?)ストーリーだww
まだ恋心と固まっていない淡い気持が伝わってきましたよw
ムライ君は、ウラでチョコ貰って喜んでいるのか、
それとも、ごめんなさいをされたのかww
その辺が気になる所ですwww
ムライ君が爽やかに笑顔を見せた時のケンジの胸の痛みって・・
それって やっぱりサナエのことを 好きと思う気持ちが心のどこかに
あったからなんでしょうね
他には特になにもねぇ。・・というケンジの心が切ないんですけどw
・・て 自分の気持ちに気付いてないのか 素直になれないだけなのか・・
青春を描いている お話ですね~
あぁ・・若かりし頃を 思い出すわ♪ (*´∀`)クスクス
タイトルみて、オモシロ系かと思いきや、
普通のラブーなストーリでビックリしたw
いやー、あまずっぱいね!
最後、目で見送った、なんて、その辺の描き方はうまいなぁ~~
玄関扉を開けながら、すこし笑っていたってトコもいいねw
ただ、キス味のチョコっていうのは、か、か・・・ハクション
じれったい恋心。
ムライ君、ある意味、可哀想・・・。