オイラがまだ大学生だった頃、当時よくツルんでいた友人が何人かいました。
その友人の一人ヤマダ（仮）という奴がいました。
地元の友達なので、小学校が同じだった『らしい』のですが、クラスが違ったので当時は全く知りませんでした。

実際に友人になったのは大学に入って車で出かけるようになってから、共通の友人を通じて仲良くなりました。
コイツとは妙に気が合いまして、会った瞬間に十年来の友人のようになりました。
ウマが合うとはこういう事をいうのでしょう。

ヤマダは人を惹きつける『徳』というのでしょうか、そういうモノをもっているやつで、ヤマダの周りにはいつも友達がいるという感じでした。
実際、通っている大学が違うのにオイラとヤマダは良く合っていましたし、ヤマダを通じてヤツの友人とも旅行に行くような仲間になりました。
俗にいう『男に惚れられるヤツ』で、ヤマダといると本当に楽しい時間を過ごせました。
まぁ、お互いに車好きっていうのもありましたけどね。

ただ、男にモテるのが女にモテるのかというとそれはまた別問題。
基本的には女日照りの日々が続いておりました。
いつだったか、夜中の１時過ぎに電話があって（まだ携帯電話なんて無かったんだよ）
『わりぃ、今さ鎌倉にいるんだけど電車がなくなったから迎えにきてくれ』
なんていうこともありました。

ちなみに、ウチから鎌倉まで高速道路で１時間半以上かかります。
なんでそんなのことになったの？と聞くと
『いや～酔った勢いでＫちゃんに告白しちゃったよ』
ぶわっはっは、それは面白い！よっしゃ、じっくり聞いてやるからそこで待ってろ！ってんで、高速道路をマジでぶっとばして１時間２０分でつきました。
『うわぁ、早いなびっくりだー』
オイラの実力をなめるなよ？面白い話の為なら全力だぜ？

話を聞くと、酔った勢いで告白してＫちゃんの最寄の駅まで送ったのはいいけど、帰りの電車まで考えなかったという事でした。
うわぁ・・・話としてはめちゃめちゃ面白いけど、ソレはうまく行くとは思えないんだけど？
だって、Ｋちゃんさっさと帰っちゃったんでしょ？オマエが帰れないの知ってるのに・・・。
後日談で、やっぱりフラれました。

っつーかさ、なんでその娘がよかったの？
『いや、胸がめちゃめちゃデカいんだよ！』
アホだ・・・。しかし、男の真理ではあるかもしれん。

さて、数年後。
就職して、しょっちゅう会うことも出来ませんでしたがそれでも、何かの時に会って最近どうよ？みたいな話をしておりました。
すると、ヤマダが
『あ、ごめんちと電話かけてくる』（当時は公衆電話をつかってたんですよ）
はいよ～いってら～。

しかし、だいぶ長いことかえってきません。
夜でしたので店の中の客はまばらです。
コーヒーばかり飲んでいたのでちょっとトイレに・・・。
すると、ヤマダが電話の前にいました。
テレホンカードを電話機にいれて、数字ボタンを
『ドタタタタ！ドタタタタ！ドタタタタタタタタタタ！』と連打しています。
その後、ガチャンと受話器を落とし、またテレカを入れて
『ドタタタタ！ドタタタタ！』と連打しています。

オマエ・・・何してんの？
『いや～、彼女のポケベルに文字を入れてるんだよー。』
みなさんご存知？携帯やピッチが出る前は若い男女はポケベルで連絡しあっていたのですよ。
そう、高校生がね。オイラ達からしたら下の世代と思う人たちです。
『ポケベルで文字を入れるのも上達したよ』
彼女の名前はＳちゃん。どこで知り合ったのか聞きませんでしたがポケベル世代のようです。
『ん？年齢？１８歳』
オマエ、犯罪だよ。俺らハタチをだいぶ過ぎたぞ？

その後、何度か会いました。丸顔で色白で面白い娘です。歌がメチャ上手でした。
仲良くやってるのかな～と状況を聞くと、たいてい彼女のグチがヤマダの口から漏れました。
やれ、ワガママだ。いう事を聞かない。自分勝手だ等々。

そんな時、ヤマダが言いました
『まったくよ～、あのスベスベマンジュウガニめ！』
ぶっ！なんだよ、そのスベスベマンジュウガニってさ。いきなり言うから笑っちまったよ。
『そういうカニがいるんだよ！語呂がアイツっぽいじゃねーか。丸顔の饅頭っぽいんじゃ～～！』
意味わからん。褒めてるの？けなしてるの？っつーか褒めてないか。
まぁ面白いからいいけどさ。
その前にそんなカニがいるのなんて知らなかったよ。

そんなわけで、さわってみたい動物はスベスベマンジュウガニですね。
ちなみに、毒ガニです。食べたら死にますよ。

あ、ヤマダとＳちゃんはその後さっさと結婚して今じゃ子供が三人います。