Nicotto Town



久遠永遠桜の下で【5】墓参り

ドーナツと火吹きリンゴのアップルパイをカフェ「エーアイ・カデン」に納品したミカルたち。

残りの火吹きリンゴのアップルパイを ミカルの家で食べていた。
「美味しい~♪ボクが働いてる「くまくまベーグル&ドーナツ」の人たちにも食べさせてあげたいなぁ~」
「クマがウェルカム王国に帰る時 火吹きリンゴのアップルパイをひとつ 持たせてあげるね」
ミカルはそう言いながら アップルパイの数を数えて 確認していた。
「うん、二切れ以上残りそうだから 大丈夫だね」

「じゃあ、ボク 帰るね~!」
火吹きリンゴのアップルパイが入った包みを持ったクマは「くまくま魔法陣」を起動させた。
くまくま魔法陣が大きく光ると クマ・タイヨウの姿が一瞬にして消えた。
この「くまくま魔法陣」は『くまくまベーグル&ドーナツ』の店内に直接通じている。
「じゃあ、私たちも そろそろ帰るね~」「アップルパイ ごちそうさま」
カンナとミツルが手を振り それぞれの家へ飛んで帰っていった。

「ミカルさん、その二切れのアップルパイ どうするんですかぁ?」
「お父さんとお母さんの所に持っていくの」
ミカルの父と母が眠る墓前に 火吹きリンゴのアップルパイが二切れ。ミカルたちは 墓の前で手を合わせる。 
「おお、ミカル…来ておったのか」「モロクおじいちゃん」
全身が岩石で出来ているゴーレム族の老人「モロク・モーロック」が 声を掛けてきた。
「おや、ココアがもう一人 おるのぅ~。ワシ、目までモウロクしたんか?」
「私はココアじゃなくてマリアですぅ~」
「おお、マリアさんかぁ~。本当にココアにそっくりじゃなぁ~」
「はいっ、よく言われますぅ~!」

「もうすぐ 新月じゃのぅ~。ミカルは 新月の夜に天使になるんじゃったな」
「うん…でも、私が天使でいられるのは 新月の夜だけだよ」
「満月の夜のサキュバス変身の時と同じなんですねぇ~」と、マリア。
「満月の夜と新月の夜 ミカルが変身するたんびに ロキが来るんだよね」と、ココア。
「最近は 満月と新月の夜以外も ロキが毎日来て こう言うの…」
『人間のキミも悪くない…』
気がつけば ミカルはロキに後ろから抱きしめられていた。
「っ!? ロキ!?」
「ミカル 墓参りは もう済んだかい?これから 私の屋敷で…」
『イザナミキーック!』
口説きの最中に ロキの奥さんであるハイエルフ「ユミコ」の飛び蹴りを喰らって ロキは大きく吹っ飛んだ。
「もう!ロキくんったら!いくら ゴールドピーマンを食べたくないからって ズルしちゃダメだよ!?
セトくんやオハラさんに 代わりに食べさせるなんて…!」
「ロキ様が食べられなくて困っていたから 私が代わりに食べたまでよ!」
ロキの愛人でサキュバスの「マリー」は ロキを助け起こしながら 憮然と言い放つ。
「私は 昔と同じように ロキが残したゴールドピーマンを食べてあげただけだよ♪ね、ロキ♡」
ロキの双子の兄「セト」は ロキの頭を撫でながら 笑顔で答える。
「まったく もう!オハラさんもセトくんも ロキくんを甘やかして!
それじゃあ いつまで経っても ロキくんが ゴールドピーマン嫌いを克服できないじゃない!」
「だいたい、ムラサメさんが ロキ様に 嫌いな物を無理に食べさせようとするのが いけないんじゃなくて!?
ロキ様!嫌いな物を無理して食べることないですからね!…って、あら?ロキ様?」
ユミコとマリーが言い争っている間に ロキの姿は忽然と消え、すでに居なかった。
「ロキは ミカルたちを追って もう行っちゃったよ?」セトが答える。
『えっ!?』ユミコとマリーは 二人揃って驚いた。
「…すみません、お騒がせしました」と、ユミコはモロクに謝り、墓地を後にした。
マリーとセトも ユミコの後に続いた。

「セイジ、ユメミ…おぬしらの娘 ミカルは 元気にやっとるよ…」
墓石に刻まれた「セイジ・ヒダカ」「ユメミ・ヒダカ」の名前を見やりながら モロクは 独りごちる。
「なぁに、心配いらんよ…。今度の新月の夜も 無事 乗り越えられるさ…。
新月の夜だけ天使になり、満月の夜だけサキュバスになる。それ以外は人間。難儀なことよのぅ…。
じゃが、そのことで 父親である天使の「セイジ」を 母親であるサキュバスの「ユメミ」を
恨んだことはないとミカルは言うておった…」

「お父さんとお母さんに挨拶したし、これでやっと一息つけるね」と、ミカル。
「昨日、ミカルさんのお家に来た時から バタバタしてましたからねぇ~」と、マリア。
ココアが これまでのことを振り返る。
「カンナとミツルが家まで迎えに来て アン・ダンテのお屋敷で「新月恒例 パジャマパーティー」に参加して、
翌朝 朝御飯食べた後 3国のお姫様たちのお見送りして、
その後 リンリンゴの森で火吹きリンゴを採って、アップルパイを作って、エーアイ・カデンに納品して、
ミカルの両親のお墓参りをして…」
「随分 忙しかったんだね…疲れただろう?私の屋敷で ゆっくり休んでいかないか?」
ロキが ミカルたちの話に何食わぬ顔して入ってきた。
「ロキ!いい加減しつこいわよ!? 毎日毎日 飽きもせず ミカルに付きまとって…!
ほら、ミカルも 何か言ってやんなさいよ!」
「コ、ココア!? えっ!? そ、そんなこと 急に言われても…あ、あの…えっと…」
ココアにいきなり話を振られてミカルが困惑している所に ドMな人狼娘「メロウ・フェンリル」が現れた!
「ロキ様!この魔法の紐「グレイプニル」で 私を縛って下さい…っ!」
「俺の妹「メロウ」を縛っていいのは 兄であるこの「ノーザン・フェンリル」だけだ!」
「じゃあ、メロウを縛るのは ノーザンお兄様に任せた…」
「そんな!ロキ様じゃなきゃイヤ!」「メロウ!お兄ちゃんよりロキの方がいいというのか!?」
メロウがイヤイヤしたことにより 何やら雲行きが怪しくなってきた。
さらに「自称 マカマカイのプリンセス」である『ヨリコ・デビロット』が登場し、事態をややこしくする。
「ロキ・ミザール・アルコル!「マカマカイの貴公子(プリンス)」と呼ばれたそちと結婚すれば、
わらわは 自称を返上し、名実共に『マカマカイのプリンセス』になれるのじゃ!玉の輿じゃ!」
と、そこへ「アスカ・ファーレンハイト」が ヨリコに待ったを掛ける。
「いいや!ロキは わらわと結婚するのじゃ!玉の輿…もとい、宵の口じゃ!」
アスカの姉「レイカ・ファーレンハイト」が 二人の間に割って入る。
「ヨリコ!アスカ!二人とも、おやめなさい!
ロキは すでに既婚の身。このままでは重婚になってしまうし、あなたたちの年齢で結婚はまだ早いわ!」
「レイカは黙っておれ!これは わらわとアスカの問題じゃ!口出しするでない!」
「そうじゃ!姉上!ヨリコには負けられんのじゃ!口調もキャラも丸被りじゃしの!」
「タマノコシ!ヨイノクチ!ジューコン!何だかとってもぷいにゅ~だぁ♪」
3姉妹の末っ子「アリア・ファーレンハイト」は 無邪気に復唱していた。
「ロキくん!?/ロキ様!/ロキ♡」
ユミコ、マリー、セトの三人が 追いついてきた。

「ロキさん、モテモテですぅ~」
「満月と新月の夜以外も ロキが毎日来るって言ってたから ミカルが心配だったけど 何か 大丈夫そうね」
「うん、今日は もう お家へ帰ってゆっくりしよう」
ミカルたちは 帰途に就いた。そして、一日が終わる。

ーつづくー




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