Nicotto Town


キラキラ集め報告所


ファイブスターズ(仮)4-3

「…悪ィ。オレ、ファリス…ッて言うか、その神官戦士たちを誤解してた」
「誤解?」
「ああ。オレはてッきり『汝は邪悪なり!』ッて叫ンで問答無用で斬るッて印象が…」
「マザー・フレイアも、若い頃はそれで苦労したと嘆いてましたよ」
頭を掻いてバツが悪そうな表情を浮かべるチャーリーに対し、ファリシアは小さく苦笑した。
「確かに悪を討つのはファリス信者の務めではあります。
 ですが、目的の為には手段を選ばぬ輩になってはいけない。
 それがマザー・フレイアの考えであり、私も賛同しています」
目を伏せて誇らしげに語るファリシアを見て、チャーリーは言う。
「…良い人なんだな。そのマザー・フレイアッて人は」
「ええ。孤児だった私を育てた母であり…私の誇りでもあります」
「オレも会いたくなった。そのマザー・フレイアに」
「この“使命”を果たせば会えますよ」

そして二人は神殿に入らなかった三人組に合流した。

「…なるほど。確かにそれは胡散臭いと感じるのも無理はない」
チャーリーの言葉に深々と頷くマート。
「じゃが、一応ではあるが神殿内で取る態度ではないな」
鍛冶の神ブラキの神官戦士であるバルガスの苦言には、
知った事かと言わんばかりに、チャーリーはそっぽを向く。
「しかし困りましたねぇ。何と言いますか…私は先ほどから胸騒ぎが止まらないんです。
 これが当たらなければ良いのですが…」
エルシアがそう漏らし、一行がこれからどうするか思案していたその時。
路地裏からリルルが姿を現し、一向に合流すると、
「…大変よ。とにかくアタシと一緒に来てっ」
小声ではあるが、青ざめた表情をしていた彼女を見て、一行は素直に彼女に追従した。


-話は少し前にさかのぼる。

木箱の陰からずっと神殿の裏口を見張っていたリルルが異変に気づいたのは、
ちょうど、ファリシア達が神殿を出た頃である。

「?!」
別の路地裏の影から、一人の小柄な男が姿を現した。
フードつきのマントをかぶり、両手で大きな頭陀袋を背負っている。
男は袋をそっと降ろし、裏口を数回ノックする。
そして、「頼まれてましたクリル様へのお届け物です」という声を聞き取った。
その言葉で扉が開く。
中から現れたのは、黒いマントを纏った男だった。
彼は「ご苦労」と袋を受け取り、換わりに金貨十枚-銀貨にして百ギメル分-を手渡した。
「へへっ、ありがとうごぜぇます」
いかにも卑屈な笑みを浮かべる小男を余所に、黒マントは無言で扉を閉めた。

もと来た道を戻りながら、男はニヤニヤ笑っていた
「ちょろいもんだぜ。子供一人連れて来るだけでこれだけの金が手に入るなんてなぁ」
「その話、本当?」
その言葉にぎょっとして振り向くと、一人の女性が立っていた。
一見ただの子供に見えるが、その耳は間違いなくグラスランナーのそれであった。
「ちっ!」
小男は逃げようとしたが、既に遅かった。
リルルが投げつけたボーラ-両方に錘の付いた紐-は小男に命中し、
身動きが取れなくなって勢い良く転ぶ。
「畜生!何でグラスランナーがこんな所にいやがる!?」
男がそれを振りほどこうとした時には、
リルルは既に男の喉下に短剣を突きつけていた。
「そんな事はどうでも良いから素直に話しなさいね。
 小父さん、一体何を運んでいたのかしら?」
「…」
「ふーん、シラを切るのね。それじゃ盗賊ギルドに言いつけちゃおうかな~」
その言葉に、男は顔を青ざめて観念した。
「わ、わかった!実はあの教団から頼まれてたんだ。
『生贄に使う者を連れて来い』ってな」
「『生贄』!?」
「ガキ一人連れて来るだけで金貨十枚。こんな楽な仕事、あんただって請けるだろうよ?
 だから頼む!ギルドへ言いつけるのだけは勘弁してくれぇ!」
「…いいわ。その代わり二度とこんなことはしないようにね」
そう言って、小男からボーラの拘束を解いたリルル。
「あ、ありがてぇ。それじゃあなっ」
逃げる小男の背を見て、リルルは呟く。
「…バカね。口約束ほど当てにならないものはないの」
小男の人相はしっかり覚えていたリルルは、
後で盗賊ギルドに通報することを決めつつ、ファリシア達の待つ神殿前へと駆け出した。

「…その話、本当ですね」
「間違いないよ、お姉ちゃん」
思わず大声を出しかけつつも、平静を装いつつ問うファリシアに、
リルルは真顔で答える。
「嫌な予感、当たっちゃいましたねぇ」
エルシアは溜息交じりに肩をすくめる。
「とにかく急ごう」
チャーリーの言葉に一行は頷き、神殿裏口へと向かう。

裏口には当然鍵がかかっていた。
しかし、リルルは荷物からシーフズツールを取り出して、難なく鍵を開ける。
「…向こう側から声は聞こえないみたいだけど、皆静かに、ね」
扉越しに聞き耳を立てたリルルの言葉に、
一行は無言で頷き、神殿裏口の中へと潜入した。

アバター
2010/05/14 10:49
 「盗賊ギルド」は、賞金首を狙うタイプなのか、
 賊の中の治安維持部隊なのか…まぁ、小物が通報で震えるのは、
どちらのタイプでも納得です。

 「7つ道具」シーフズツールですか。なるほど…。
 前章で初の呪文が出てきましたので、今回も
 アバカム的な呪文の行使かと思ってました。
アバター
2010/04/29 10:44
>ラト さん
>事態は急展開!
>ダイスをふりつつ息を呑む瞬間ですね。
それは次回のお楽しみに。
…実は『PCでダイスを振れるツール』がありまして。
実際戦闘などではそれを使いますw。
…ただ、あまりに忠実すぎると思わぬ事態が起こらないとは限らないので、
(実際、過去、何度それで涙したことか…(血涙))
その点だけは【主人公補正】ということでご容赦を(苦笑)。

>yurie☆ さん
>それ、本にしてもイケる気が≧∀≦"
仮にも一時期は物書きを目指してた身。
そしてTRPGではマスターを何度か経験してましたから。
(だっていざとなったら賽の目をごまかせますから(苦笑))

ただ、やはりこれは多くの先人達が築いた作品を基にした【二次創作】ですので、
本なぞ夢のまた夢です。

しかし、このような応援がある限り、私は今後もこれを書き続けます。
アバター
2010/04/29 09:55
スゴ!!私には無理無理(*´・д・)ノウン
それ、本にしてもイケる気が≧∀≦"
アバター
2010/04/29 07:54
事態は急展開!
ダイスをふりつつ息を呑む瞬間ですね。



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