Nicotto Town


キラキラ集め報告所


フェイトブレイカー! 序章1


此れは今ではなく、ここではない世界の物語。


煌々と満月が夜空に輝くある夜。
古びた塔の前で激しい戦いが繰り広げられていた。

「…爆ぜよ!」
灰色のローブに身を包み、銀でできた杖を携えた老人が叫ぶと共に、
入り口前の空地の一部が轟音を立てて爆発し、
無数の骸骨兵を文字通り粉砕させた。

その老人を守るように、一人の少年が立ちはだかっている。
この場には相応しくないだろう、黒い礼服とシルクハットを身に纏い、
逆にその細い両腕には不釣合いな漆黒の大鎌を手にし、
「ハッ!!」
という言葉と共に、彼より二周りほど大きな異形の獣を、
いともたやすく両断した。


「またか!奴は何体呼び出せるんだ!?」
無数の敵を殲滅した少年が、
塔の入り口と真反対側-およそ20メートルほど離れたところ-にいる、
幾多の魔法文字が刻まれた漆黒のローブ姿の人物に近づこうとした瞬間、
その前に無数の異形の獣が姿を現し、その行き先を遮った。


「今宵は満月。私の力は十分発揮できる」
半月を象った飾り付きのペンダントを下げた、黒ローブの人物は凛とした少女の声でそう告げた。
「…何故、私の…いや、“満月の王”の言葉を拒むのです?“満月の王子”様」
眼前の獣の群れを抑えながら、黒ローブの少女は相手を諭すように言葉を続けた。

「くどい!そして私をそう呼ぶな!!」
“満月の王子”と呼ばれた少年はそう叫ぶや否や、手にした大鎌を構えなおす。
そして、黒ローブが獣の群れに攻撃するよう命じようとする前に、
「師匠は下がってください!このままじゃきりがありません!」
老人に背を向けたまま叫んだ。
黒ローブの少女が鼻を鳴らして、右腕を振ると同時に獣の群れが襲い掛かってくる。
少年は手にした大鎌を、まるで小枝を振るかのように軽々と振るい、
獣の群れをなぎ払った。
「…そうじゃな。その言葉に甘えさせてもらうよ」
目の前の少年を気遣いながらも、彼の獅子奮迅な戦いぶりを見て、
些か苦笑しながら、扉の中へと姿を消した。
「『鍵』を掛けるぞ。…合言葉はわかるな?」
「はい!」
扉越しの師匠の言葉に、少年は返事と同時に大鎌を振るい、獣の何匹かを葬った。


その後も、戦いは熾烈を極めた。
しかし。


「出よ、火霊!刃に宿れ!」
胸に着けている五色のバッジ-赤・青・黄・緑・紫-の赤いのに触れて叫ぶと同時に、
大鎌の刃に炎に覆われ、その刃で死霊の騎士を両断し、
「出よ、氷霊!刃に宿れ!」
今度は刃に冷気が帯びて、それを眼前で振り回す。
すると旋風と共に吹雪が発し、無数の獣を凍てつかせ、
「出よ、地霊!無数の石を弾き出せ!」
その言葉と共に、文字通り、地面から無数の石つぶてが飛び交い、それを粉砕した。
「出よ、雷霊!そいつを撃ち落せ!」
そして今度は地面から青白い雷が撃ちあがり、空を飛ぶ異形の獣を貫いた。

次々と呼び出される怪物の群れを、少年はそれを悉く撃退した。


-数刻後。
どうやらお互い戦い続けて疲弊したらしく、一時の間が空いた。


「もうお終いか?今度こそ一対一でいくぞ」
疲れと苛立ちを抑えつつも、少年は黒ローブに近づく構えを見せている。
「…私はその気はありません。貴方が王の命に背くから反撃しているだけです。
 貴方が首を縦に振りさえすれば、こんな真似はしたくなかったのですが…」
一方、数多の下僕の屍を憐れむような目線を向けながら、
黒ローブの少女は静かにそう答えた。
その隙を見て、少年が一気に間合いを詰めようとした瞬間だった。


「うぉあぁっ!」
塔の方から悲鳴が上がった。誰のかは明らかであった。
「師匠!?」
少年が驚いて振り向くと同時に、黒ローブの背後に新たな人影が現れた。
「…【ハーフ】。もう帰ろう」
「【ニュー】!?一体どう言う事だ!?」
黒ローブ-【ハーフ】-は同じように振り向いて思わず大声を上げた。
【ハーフ】の影から急に姿を現したのは、
黒のフリルドレスを身に纏った幼女だった。
こちらは新月を象った飾り付きのペンダントを下げている。
白い日傘を手にしているが、その先端から赤黒い液体が数滴ほど滴り落ちた。


「…くっ!『知恵の輪が外れた』!」
合言葉を叫んで扉を開け、少年は塔の中へと姿を消した。

【ハーフ】はそれを追おうとするが、【ニュー】が彼女を引き止める。
「…もう夜が開ける。…それに…私たち、する事、たくさんある」
静かで淡々と喋る【ニュー】に言われて、【ハーフ】は空を見上げてみる。
彼女の言うとおり、もう東の空は橙色に染まり、遠くから鶏の声が聞こえてきた。
【ハーフ】はギリと歯軋りしたものの、
吸血鬼である以上、これ以上ここに留まる理由はない。
むしろ【ニュー】の言葉通りにするしかなかった。
「…じゃ、先に帰る」
そう言って【ニュー】は【ハーフ】の影の中へと沈んでいった。
「…いずれ又会うだろう。その時は首を縦に振って欲しいものだ」
そんな事は絶対無いだろうと思いつつ、彼女も霞のように姿を消した。

アバター
2011/09/26 10:52
おもしろいよ^^

続きがもっと読みたいなぁ(#^^#)

書ける勢いでて よかったね^^

無理せず 楽しみながら書いてね^^

ずっと読むからね^^v



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.