Nicotto Town


✪マークは作り話でし


✪ 筆入れ

メリーさんの筆入れは、ときどき急に海辺になる。
授業中に机にうつぶせで寝ていると、波の音が聞こえてくるのだ。
これはまずいまたあれだ、と思って慌てて蓋を開ける。
以前に一度、びっくりして机に膝をぶつけたことがある。
海水がこぼれて、机の上のノートが濡れてしまった。
いくら乾かしても、しばらくシワシワだった。
今は慣れっこになったので、指を入れて砂で遊んだりする。
砂で色々なものを作ることもある。
ときどき大きな波がやってきて、それが壊れてしまうのが悔しい。
いつまでもその状態が続くのだが、
一度蓋を閉めてしまうともう普通の筆入れに戻っている。
友だちの間でも有名だった、メリーさんは少し鼻が高かった。
そんな筆入れを持っている友達はひとりもいなかったからだ。
でも意地悪なケイトは、「役に立たないじゃないの」と悪口を言う。
そういえば、そうだ。
海辺になったからといつて、役に立たない。
せめてもう少し大きな筆入れだったら、海に入って遊ぶことができただろうに。
あるときメリーさんは、電車に乗りひとりで旅に出かけた。
本物の海を、見てみたかったのだ。
それはとても大きくて、波の音はうるさく潮のにおいは臭かった。
海岸を歩いてみると、砂の上を歩くのはとても難しく歩きにくい。
波が運んできた数々の漂流物が、お店のように並んでいた。
そうか、もしかしたら私の筆入れが落ちているかも知れない。
なんとなく、そう思った。
その蓋が開いたままになっているのではないだろうか。
しばらく探してみたけれど、どこにも筆入れは落ちていなかった。
黒い犬が一匹いて、やはり何かを探しているようだ。
ときどき目があったけれど、
メリーさんは犬が嫌いだったので知らん顔をしていた。
すると犬の方が近づいてきて、メリーさんに話しかけてきた。
「筆入れを探しているんですか ? 」
メリーさんはびっくりしたけれど、
犬の声が紳士的だったので安心して答えた。
「ええ、ずっと小さい頃に使っていたんです」
「それならこの前まであったけど、もうないね。流されてしまったんだろう」
「そうですか、ありがとう」
家に帰ってきても、メリーさんは黒い犬のことが忘れられない。
考えれば考えるほど、不思議な犬だった。
それから10年が過ぎメリーさんは結婚して、隣の町で暮らすことになった。
旦那の実家では犬を飼っていた、その犬が子犬を生んだ。
親犬に似てみんな白い犬だったのに、一匹だけが真っ黒な子犬だった。
クロと名付けて、メリーさんはその犬を可愛がった。
撫でてやると、ときどきクロの耳から潮騒の音が聞こえる。
瞳はとても青く、海を映しているようだった。

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2013/01/22 15:58
olive さんコメントありがとう。

萌~。
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2013/01/22 15:23
うわ~、ステキな犬~^^!
撫でたら、癒されそう!
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2013/01/20 07:19
みかんさんコメントありがとう。

冬の海もまたいいものだ~~。
アバター
2013/01/19 23:54
海・・・近いのに、行っていないな。

海の風にあたりたいな~。
アバター
2013/01/19 18:35
あびにゃんこさんコメントありがとう。

母なる海のお話でした。
アバター
2013/01/19 18:33
さけ美さんコメントありがとう。

人はいくつか不思議体験をしてるね。
アバター
2013/01/19 18:32
百目木さんコメントありがとう。

ほほーーーそれ・・今度読んで見ます。
アバター
2013/01/19 18:31
kinako さんコメントありがとう。

めでたし。
アバター
2013/01/19 18:31
パンさんコメントありがとう。

ルフィの宝物さがし。
アバター
2013/01/19 18:29
うらんしゃんコメントありがとう。

やはり作るのは砂のお城でしょ。
アバター
2013/01/19 09:08
不思議な海のお話^^
メリーさんと海はどんなときでも繋がってるんだね。
アバター
2013/01/19 03:06
筆入れか・・、筆おろしのお話ではないのか・・むにゃむにゃ・・けけ^^

ブラしゃんとの年代差でも「筆箱」でなく「筆入れ」になるのか?
(え? あのお習字のまきすに巻く筆入れをさす? へ? ますます古い??)

子供の頃の一番大事な学用品は、筆箱(筆入れ)だったよな。
小一新入学時に、当時まだ苦しい生活の中、親からデパートで[ウランちゃんが
どーんと一面の、ジッパー式赤い筆箱(真面目に本革チック)を揃えてくれたのが
申し訳なさとともに、ものすごーく嬉しかった!! 大好きでずっとジッパーが壊れる
までの数年間 使ってた。
(ウランちゃんのパンツが見えてるのが気になって、鉛筆で塗った^^)

このお話の重要ポイント。
筆入れがメインになってる感覚がわかるんです、なんとも懐かしくて・・。。
(筆おろしが メインになってたとしても感覚がわかるんです、なんとも懐かしくて・・^^)
すまんすまん、また話題がズレてゆく^^

筆入れの中身は、鉛筆削りできっちり削った数本のBかHB鉛筆に、赤青両刀使い(..?)の
色鉛筆に、唯一そのつど流行に左右されてしまう消しゴムに(これがユメだったな)。
当然鉛筆削り用簡易折りたたみ式のカミソリ(表面が屈折模様で光ってて緑がお気に入り♪)。
ちょっと よゆうが出てきた頃には、鉛筆キャップが一気にメインアイテムになってたな。
アドちゃんとか。。

筆箱(筆入れ)への、少女の、この特別な感覚ぅっ♪
・・を、ブラしゃんのここまでの海に繋がってる今回のお話には、しばらく読み終えた後
いろんな 小学生時のその時なりに自分では、今から思えば、その学年ごとに自己実現目標たて、
また、してるつもりだったので、メリーさんの感覚がとっても嬉しく心に入ってきたぞぃ!!

クラスにメリーさんがいたら、数少ないお友だちに慣れていただろうョなぁ・・。
アバター
2013/01/18 22:09
バラージュ・ベラの「ほんとうの空色」を思い出してしまったです^^
道具箱の蓋の裏に塗った空から雨が降ったり、月や星が出たり...♪懐
アバター
2013/01/18 21:10
ステキなお話ですね~~。
筆入れはないけれど代わりに素敵な出会いがありましたね。^^
アバター
2013/01/18 20:53
まだ何かを探してるのかな・・。
アバター
2013/01/18 20:52
メリ〜〜さんの羊ヒツジ〜〜〜♪
ン? 黒い犬か・・・

波の音は深くて物語も深くて
砂浜で鼻を突っ込んだり遊んでいるのかな? フフフフ




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