時の精タイムゼロ(2)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/08/04 13:38:21
時夫は、両側にさまざまな骨董が並ぶ狭い通路を奥に進んだ。
つきあたりの棚に古い本が倒れていてその本と本の間の見えにくい所に古い懐中時計が置かれていた。
時夫はその懐中時計を手に取ってみた。ずっしりとした重さがあり金色の鎖が付いている。しっかりしたつくりで金で出来ているのかなと思った。金色の蓋が閉まっていたが、表面に0(ゼロ)と刻印してあるようだ。時夫はその懐中時計に前から知っているような懐かしさを覚えた。
「お客さん、それを見つけたんかね。」
後ろから声がした。太古堂の店主らしい。丸い眼鏡をかけた白髪のおじいさんだ。白い髭もはやしている。
「一目ぼれをしてしまいました。これ、高いですよね?」
時夫はポケットをさぐったが、1万円札が1枚しか入っていなかった。
「そうだな。それは、たいへん古いもので金で出来ているし最低100万円以上はするな。」
時夫は残念そうに懐中時計を棚に戻そうとした。
「でもなぁ。それちょっと問題があってな蓋が開かないんだよ。もうかれこれ何十年もその棚にあるが誰が開けようとしても開かないんだ。わしも開けられなかった。時計は持ち主を選ぶと言うしもし蓋が開けられたら安く譲ってもいいかな。」
時夫は手に取った懐中時計の蓋よ開けと念じながら開けてみた。
その瞬間、時計が一瞬光ったように見えた。
パチン
音を立てて懐中時計の蓋が開いた。
「あらら!」
太古堂のおじいさんが目をむいて驚いている。
「お客さん、どうやったの!この懐中時計と縁があるのかな。そんなら、手持ちのお金はいくらある?約束だからそれで譲るよ。」
時夫はポケットから全財産を出した。
12300円なり♪
「えー!100万円が12300円って!」
「私も1000円出してあげる♡」
隣で美代子も1000円札をさし出している。
「えーい。もう仕方ないから、それで売ってあげるよ。その代り時々のぞきに来ておくれよ。」
時夫には懐中時計が嬉しそうにしていると感じられた。
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