ちょっと昔のホームビデオを見たい、と子どもが言ったので、「これが自分って理解しているのか？」と聞いてみると、一応「うん。」と言う。そうか…。たしかゴリラかチンパンジーが鏡に映っている自分を自分だとわかったらしいとかで、霊長類の知能は四歳児程度だとかなんかの番組で見た事あるけど、一応四歳児くらいの知能は備えているって事なのかな。とちょっと感動した。私の知能年齢とそこまで変わらないという事かなと、もうあと少しで追い越されそうでゾっとした。

　ホームビデオ始まって数秒で「かわいい～～～」ってゆってる動画撮影者がいた私だった。私は今と変わらずずっと「かわいい～」しか言ってなかった。サングラスしてる～かわい～って言ってた。数年たった後、自分の姿をみたら、「かわいいとしか言わな過ぎてアホな親」みたいな感じに見えた。ようやく時の洗礼を経て、ようやく私も私自身で「かわいい言い過ぎ馬鹿っぽ」っていうのがよくわかってきた。かわいいゲシュ崩は年期が入った現象だった。ここまで我が子に、暴力的なまでに「かわい～」しか言わなくて、本当に将来、かわいいが何かおかしい事にならないのか。さすがに不安になってきた。偉い学者さんみても「かわいい～」。素敵な芸術作品みても「かわい～」恐ろしいモンスターをみても「かわいい～」……とかになったらどうしよう。やばい奴に育ってしまうんじゃないだろか。何か動くもんを見たら一も二もなくとりあえずカメラで激写する、ペーパー子さんなみに「かわいい～」を自分の持ちネタのように一言目で言ってる私。なんかもうかわいいゲシュ崩芸としてこれが自分の芸なのだとか言ってひらきなおってしまいたい。子どもよ、悪いのは私だ。かわいいがゲシュタルト崩壊してたら本当に詫びたい。だがどうしたらいいのだか。ゴルゴ13みたいに渋く無口に完璧にスマートにスタイリッシュに、高額な大仕事をやってのける、そんな人になりたい。

　それにしても、過去の動画を見て思ったけど、自分がそこまでかわいいしか言ってなかった記憶はなかった。覚えてなかった。過去にあった些細な日常のヒトコマは本当に記録しないとすぐ消えていく。自分が言ったこと、全然覚えてなかった。かわいいしか言ってない人みたいな印象、実生活では私は持たれてないぞ多分。私はクールにでしゃばらず、無駄にかわいいという人ではないのだ、と自分では思ってる、と書いたらゾッとさせてしまうだろうか。はてさて。