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かきくけこのブログ。


ゲシュ崩ログ 167 カオナシ ジブリキャラ

ジブリのアニメーションのどこが面白くないのか。久石譲の音楽だけでも楽しい。というか、私はジブリは久石譲だと思ってた。久石譲の音楽のアニメ面白いと思ってた。けっこう普通に「面白くない」って言われる事もしばしばある。どこらへんが面白くないのか、具体的に聞いた事がないけど、声優さんが棒読みなのが嫌だという玄人志向な本格的な感想の人もいた。耳から入る情報も、アニメの良さの一つだと思う人が多いという事だ。そういう意味では、久石譲の音楽って。味わいの半分くらい占めてるのではとか。そういえば。個人的にはあの棒読みがものすごく味わいでいいじゃん!と私は思ったけど、感情がなんにも表現されてないとか言われると、確かに。世の中情感たっぷり、説得力のあるプロがいるんだしそうだなとか思ったりして。私にはもう絵の細かさやら動作のリアリティやら作品世界の精密な作りこみとか世界観を納得させるストーリーの重厚さとか、物語を見た時に心に去来する気持ち、感情。そんなものやらかんやら…えんえんとはぁ…すごいジブリすごいジブリアニメ面白いと、いまだに新作アニメでもないのに千と千尋の神隠しのカオナシについて考えを深める日々。

 カオナシについて。
千と千尋の神隠しを見た時、カオナシというキャラクターがすごいと思っていた。今まで、全体的な組織的なものに所属する何何のなんたら、とか肩書のついてる悪役というものが、ジブリにはいっぱいいた気がする。でもカオナシというキャラクターには、謎しかない。カオナシは、自分すらない。名前も肩書もない。何か喋っているけれど、それはもう、自分の言葉だかもさだかじゃない。存在しているけれど、殆ど存在していないかのような存在。盗賊、とか悪党、とか、もののけの長、とか、どうやら哺乳類的な誕生と年齢がありそうなキャラクターいっぱいいたけど、カオナシという存在には、もはやその肉体すら人間に似ている借り物の何か、にさえ見える。姿すら持たない。生命体、といってもいいのかすら危うい。そんな存在。橋の上に立ってる時なんて透けてるし。人間ではないのに、人間みたいな姿をしている。名前も顔も肉も自我もないけれど、人間に似て存在している。そんな存在。湯屋に入るまでは暴走してなく、欲望すら希薄な存在。そもそも、湯屋が客として接待したい、という湯屋の欲望に感化されているかのような、あの大暴走していた時の欲望の塊みたいなものすら、湯屋の欲望を自らが反映させたかのようで、本来そこまでの欲望というものは、カオナシには無いんだと思う。千尋も「湯屋にいるからダメなんだ」って言ってたし。カオナシというのは、凄い悪役みたいな迷惑な存在みたいに見えるけど、カオナシ自体は悪でも善でもないものなのかもしれない。湯屋で暴走しようという欲は、本来なかったのではないか。その証拠に、湯屋を出た後のカオナシは別人のようにおとなしい。湯屋の湯婆婆の「金銭欲」を飲み込んだ結果暴走した、かのように見える。結果として、湯屋をひっくり返す最悪な働きをしたにも関わらず、カオナシには全く悪意というものも、悪をなそうという心も、なかったのではないか。カオナシというキャラクターを考えれば考える程、なんだかゾっとするというか。カオナシには悪意が無いのに、カオナシはむしろ、千尋に親切でもあった良い存在にもなれたのに、カオナシは結果的に大惨事を引き起こしたというのが、しかもそれにまったく悪意がなかったというのが、本当に怖いというか…。恐怖体験というか。誰も悪くないのに迷惑悪事に加担してしまうしかもそんな加害者が、実は千尋に優しい神様のようにも描かれているというのが、物凄い皮肉、アンビバレンツ。ものすごい矛盾で、なんとも脳みそ刺激してくれるエンターテイメント!と思える。カオナシには、言葉もなく自我もなく、悪意もなかったと思うけど、でももし、何か存在の核のようなものがあるというならば、私は、カオナシにあるのは欲望ではなく、見栄、ではないかなと思います。もしくは、「恥」というものだと思います。自分の顔を、硬くて大きなお面で隠している、本来の自分を、本来以上のより高次元の存在に見せたいという、プライド、だと思います。それがカオナシの正体だと思いました。本来体は無いから、湯屋にくる他の神様みたいに、もっと異形の姿をしてもいいはずなのに、限りなく人間に近い姿をしている、人間のようなお面をかぶっているという点で、あのカオナシという存在は、とても卑屈で人間に憧れ自分を恥じている。そんな感情が、カオナシという存在ではないか。と、見れば見る程考えます。恥。恥ずかしいから立派にみられてくて、他の姿を借りて自分を見失う。もしかしたら、恥の文化というものを、天才宮崎駿は鋭く深く愛に満ちたまなざしと表現力で、あんな風に描いたのかもしれません。恥の文化、というけれど、カオナシを描き切ったという点では、国民的なアニメといえるのかもしれません。そういうのが本当に好きで好きで仕方ないってどういう事なんだろう。
久石譲の音楽が好きすぎて尊ぶ感情が抑えられない為に、好きな理由をワードでたくさん書き出してすっきりした事がある。別に好き好きラブレターを本人に読んで欲しいとか一ミリも思ってないけど。音楽家が音楽作る→世の中に怪文書が一つ増える。そんな蝶の羽ばたき現象みたいな、よくわからん桶屋儲かる現象みたいな、よくわからん結果になる事って、世の中あるんですね…。面白いですよね。




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