姫泥鰌(ひめどじょう)
- カテゴリ:日記
- 2022/04/02 23:48:07
昨日はエイプリルフールだったので日記の掲載を控えた
一昨日書いた日記に書いた沼でのもう一つのエピソード
淡水産のエビのアミを捕まえてくるプロジェクトの網の合間に
たまーに、極たまーに泥鰌(どじょう)が一匹入ってることがあった
一般に淡水産の魚類は、水から引き上げられるとすぐに弱る
ウグイを筆頭に、すぐに活きが下がる
あわてて持ち帰り、家のバケツに収めても大抵数時間しか持たない
ただ例外は鮒、鯉類だ、彼らは強い
北海道(全国)の湖沼にあまねく分布するマブナは極めて強い
釣って帰ってバケツに入れて、愚かにも蓋をしなければ
翌朝バケツから勢いのあまり飛び出し、廊下で鮒が跳ねている
あわててすぐに水に戻す。鮒は元気に泳ぎだす
その横でウグイは腹を浮かべている
小5の箭兵衛は、いつか函館方面に棲んでいるゲンゴロウブナも夢見てた
釣りは鮒に始まり、鮒に終わる
そんな生意気な小学生だった
なにせ釣りに関しては”天才かもしれない”と思った瞬間もあったからだ
だって、釣り糸を水面に垂らし、数秒後に『あれ?仕掛け間違ったかな?』
と思い、釣り竿を上げたら、既に二匹の大物が掛かっていて、周囲の歓声を浴びた
一緒にいた父は誇りに思ったのか、嫉妬したのか、苦笑したのか
泥鰌(どじょう)の体色は文字通り土色である
一匹だけ捕まえるだけでは柳川鍋を勤務疲れの父に提供はできない
(ちなみにそれは父の好物だったw)
どんな事情で、どんな経緯で、一匹の姫泥鰌が小5の箭兵衛に届いたのか
すべては忘却の彼方である、渡してくれたのは友達だったのかな
ただ、結局そのピンク色の泥鰌は私の元で死んでしまった
愛子と同じである
Albinoとしてこの世に生を受けたその泥鰌は最低限の色素しか持ちえなかった
ひめどじょう
御姫様みたいに美しくて、儚くて、弱すぎて、でも幸せで
私はすぐその後、(例の如く)転校してしまったので、
御姫様を預かりながら、死なせてしまった責苦からのがれることができた
ひめどじょう
歌の歌詞にするにはちょときつい
ひめうなぎ
これも微妙
ひめこうろぎ
少しいけるかも
あの、11歳の時に、自宅から数十秒で冒険してきた沼が
今も存在していることをGoogle Mapで
確認して寝ることにしましょう
HAVE A GOOD NIGHT
追伸
沼は確認できた
だが周辺に民家は存在しない
単にGoogleがサボったのか
北海道三笠市新幌内緑町(旧七区)へ、行ってみるしかないのか
アミは生きているのか、たまに泥鰌はいるのか
姫の末裔は沼の(泥鰌の)宮殿で今も命を長らえているのか
あの、ひ弱で、目を見張るような美しさで、でも所詮泥鰌という
自らの出時を恨んでいるのか、逆に誇っているのか
もう全く顧みられない産炭地
地形の関係でたまたま永続してきた一つの沼
人は来て人は去り
それでも毎年雪は降り、それでも毎年雪は解け
そして夏場の雨も風もやり過ごし
たまに、そこにかって住んでいた年寄りが訪れる
沼の周りの風景は変わっている、嘆息が漏れる
今はもう人もいない、家もない
かってここで遊んだ子供たちはどこに行ったんだろう
水辺の桑の実、グズベリ、自転車のベルの音
石炭を大量に積んで、各社屋まで届ける2トン車の振動
日常の12時のサイレン。お昼時。でもいざ事故が起きた時の結束ぶり
炭鉱に事故はつきもの。人が死ぬ。人が閉鎖される。注水される
新聞に恐ろしい数字が躍る。同級生のお父さんが犠牲になり
翌週には遺族が転校していく。すみ子ちゃん、今元気かな
今さら言っても遅いけど、貴女の長い髪と真っすぐな瞳は
サイコーだったよ。お兄ちゃんにはお世話になりました
感謝しかありません
でも何故か沼は(文字通りすべてを飲み込んで)今もあるんですね
今もアミや汚い泥鰌やひょっとしたら新しい生物を育んでいるのですか
水(H2O)は現行生物の源です。
でも、もし水ではなく、乾きの方面から新しい生命現象が産まれるとしたら
これはまた、もう、何と言いましょうか、面白さのハイライトと言えるでしょう
要するに岩石人間です。いや、人間じゃなくてもいいです
ネバーエンディングストーリーでロックバイターが登場しました
敵対していなければ、共存は可能なのです
下手に起源が近ければ、逆に齟齬が生じます。
ああ、もうすぐ2時です。もう寝ましょう。
沼はまだあった。周りにもう人はいない
アミもきっと生きているだろう、泥鰌も生きているだろう
御姫様の末裔の末裔も沼の宮殿で扇を振っていることだろう
HAVE A GOOD NIGHT
といって2時間経った
ああ、楽しかった
少し寂しいですね。