Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


サイエンスじゃないフィクション①


北海道の各地を第9波のウイルスが蔓延っていた年末の冬
遅い朝に目覚めた男は、空腹を抱え途方に暮れた

仕方ない。また行かなければ
調理能力の無い彼には外食しか道は無かった

一昨日降った雪は所どころで凍っていた
夏靴で路上に踏み出した彼は己の無計画性を呪った

衣服はセーターの2枚重ね、その上に厚めのダウンを羽織り
毛糸の帽子と皮(2重構造)の手袋を身に付け、100均のゴーグルを装着し
わずかに安心できたのは、自らの、Gパン一つで大丈夫な
下半身の安定感だけで出掛けた
マスクはしていない
だって、今は誰もしていないから



ラーメン屋に着いた
もちろんドアは開いてる
出がけに聴いたニュースでは今朝、零下5℃だったようだ
他に客は数人いた
みんな着込んでいる
ぬいぐるみみたいな体形でラーメンやチャーハンを食べている
当然だろう。だって


店内の空調はその換気能力をフルに発揮させ
厨房と隔絶された客席という空間で飲食を済ますしかない
そんな中では当然暖房という概念は存在しない
ありていに言えば、冬の真っただ中
寒風吹きすさぶ中、原野でBBQをしている感じ

券売機でのオーダーは声を出さずに、手渡し無しに店内に伝わる

冬の低気圧が近づいているようだ
明後日頃には、ここ札幌にも冬の妖精達が大挙して舞い降りることだろう
まつ毛の霜を振り払っていたら、いつの間にか注文品が
隅が凍りかけたテーブルの上に配られていた
その湯気で一気にゴーグルが曇った
手探りで割り箸を準備しようとしたが、4本目でやっと成功できた
大抵芯から凍っていたからだと思う


ゴーグルの曇りは圧倒的な空調の激しさで間もなく解消できた
おかげでありつけた






政府はとうにウイルス対策を放棄していた
感染者数、死者数さえも発表されなくなっていた
なにがどうなっているのか
どこがどうなっていくのか



知ったことか
男は塩ラーメンとギョーザをかきこんだ
タレはもちろん酢胡椒

生姜による発汗がセーター内で発生しているのを
男は不快と思うと同時に、今日も生き延びれたという納得に変換していた

帰りしな
男はふと数年前の自分を回想していた

ワクチンパスポート?
マイナポイント?


Those Days Are Gone

アバター
2022/09/01 18:49
初めまして、ご訪問、コメありがとうございます
現在、鋭意作文中です
次回はロシアの一人の少女を主人公に想定していますが
いささか難攻気味です
ということでご質問には答えかねます
またの御来訪をお待ち申し上げております
アバター
2022/09/01 18:26
続きますか?




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