Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


ここは湘南か虎上浜か




君が好きだった色
一生忘れない
群青色

俺は最初はそうじゃなかったけど
それを聞いてから 一番好きな色になった

波が良い感じで戻ってきたら
ビーチ一杯の群青色のサーフボードで浜辺を埋め尽くしてやる
すぐにでも



都合をつけて
昔の仲間を集めて
それもできるだけ集めて
近所の懇意のショップで
できるだけ早く着色できるペイントをえらんで

みんな仕事が大変だけど 気合いの入ったデコトラの仲間にも来てもらって
浜辺から気の入ったフォーンをピカピカで鳴らしてもらって
懇意の花火師にも来てもらい 昼間用の爆音系を時間的にセットしてもらい

友人に最高のPA 師がいるので 俺のだみ声でも虚空に放たれるように
少しのお礼をしてできるだけのセッティングをしてもらった(雨よ降るな)


あとは彼女が波の狭間に消えた最後の目撃証言の
(俺はあんとき別の国の波を待っていた)情報を帰国後必死になって集めて
聞いて 探して 結局結果がわかって海の向こうに咆哮した

あんときお前は俺に向かってエールを送っていたんだ
ボードの上に乗って海の上なら届くと思って
俺に最大限のエールを送ってくれたんだ
観音崎裏の隠れ岩の裏流が気まぐれを起こすまで





急に
何故かアメリカのウエストコーストから付いてきた海鳥の一群が上空に飛び立った

機を逃さず
PA師というか鼻たれサチオがウエイティングの支持を全スタッフに発した
即座にデコトラの運転手の左手がゲージに移った

浜の全てのサーファーがパドリングを始めた
皆新色の群青色だ
何十台だろう

そのとき君が『群青色が好き』という意味が愚かながら初めてわかった
海が動いた
空を含めて海全体が動いた

波はまだ来ない


海に囲まれて私達は生きている 生かされている


俺も君も一番知ってる 俺たちの国の回りは海だらけだ
その時だ パドリングの最先頭で海水を漕いでいた歯欠けのキミオが叫んだ
「来る 1波目だ!」

サチオの右手がスライダーにかかった

キミオの防水性インカムが抑えた
「2波も来てる だがまだ違う」

ここで突然キミオは海水の中 俺だけのチャンネルのスイッチを選び直し
俺だけに伝えた

「いいか? もうすぐ来る 多分第3波がピークだ もうそこで俺たちも終わりにしよう」



わかっていた 今朝のお前の眼差し
俺だけの我儘 それに付き合ってくれたお前たち

先走った1台のデコトラが一瞬F#音を出したが すぐにわかって無様に消した

「あいつらも命を賭けてここに来てる 俺もそうだ」
「わかってる」

少しの沈黙の後 キミオは言い出しづらい口調でインカム越しに言ってきた
「お前は本当にわかっているのか?」

ちょっと震えた 「どういう意味だ?」

波の調子を冷静に熱く見極めながらキミオはインカムで答えた
「これは葬式ちゃうぞ 戦争やぞ 姉御が波に砕けたその報復やぞ」




昔のブレッド&バターに
こんな曲を歌って欲しかった





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