Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


告白と訴え



少年は少女の瞳を覗き込んだ
「いいかい これは他の誰にも言っちゃいけないよ」
少女は身を堅くした そして頷いた

「僕はこの秘密を知っている 僕だけだ だから安全だ」
まだ躊躇してる 言うべきか黙っておくべきか
空を見上げた まもなく陽も暮れる
「でもいったん君が知れば 二人とも命の保証はない
なぜなら君が知ったからには 君が誰かに秘密を話すかもしれない
そうなったら二人とも御終いだ」
「絶対そんなことしない」
少女は髪を振って唇を嚙みしめて否定した

少年は決心をしたようだ
そして一歩退いた
ある程度距離をおいて 身を震わせながら最後に言い放った
「もう君に逢えない 僕は吸血鬼なんだ さよなら」
少年は少女の前から暮れ始めた森の中に走って消えていった





翌朝 碌に眠れなかった少女は うつろな気分で家の前に出た
いつもと違う喧騒が村の中央の方から聞こえてくる
ふらつく歩みでそちらへ歩いていった



村の中央の広場で
一匹の吸血鬼が無様に四肢を十字架にはりつけされて果てていた

少女は森に向かった
(続かない)





Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.