Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


NIPPON RISE


  第三章
 LIZARD



       私は人間やドラゴンがとやかく言うような神ではあり得ない
       ただ単に数万世紀早くこの宇宙の片隅で誕生した意識にしか過ぎないのだから
       最早、窒素とか炭素とか水素が抱える諸問題はクリアしきっている
       酸素問題は今はまだ解決されていないが,それもすぐに思い出話しになるだろう
       ブラックマターはひょっとしたら厄介な存在として残るかも知れないが


       箭兵衛と龍一が邂逅している
       よりにもよって、どうして私の管区でこの二人が


       鯰のサジェストは適切だったのか
       それはいづれ、ここから遥かに遠い故郷に記録される私の
     (死後の)エピタフに刻まれるのだろうか


      「一部の生物群から‘ノーチャンスの女神’と称され、
       偉大なる業績を果たしながら、あり得ないほどの事態で不慮の死を
       遂げざるをえながらも、その使命を完璧に
       果たし終えた,、彼女の功績は宇宙史に永遠に記され続けるだろう」 



       冗談じゃない!私は生きる!幾多の戦いの中で多くの息子や娘を
       亡くしてきた、そんな苦しみは私一人で充分!
      「でも、ああ、あれは、鯰のサジェスチョンは失敗だったのかもしれない」



       ノーチャンスの女神は実は自分に厳しいタイプだった。
      (根に持つタイプなのは前章で触れた)
       女子高生の姿から本来の形態に戻ることさえ今は忘れていた。
       シリカ石テラスに座っている彼女はそれでも妖しく両脚を組替えた。
       「う~んもう、行くしかないわね!」
       細胞由来の生命体とはそもそも相性が合わない。あんな奴らとは始めから
       関わりたくないんだから。だって、臭いし。

       そしてノーチャンスの女神はやっと本来のエーテル的存在に戻り切り、  
       そこから数光年の範囲内にいる、仲間達の位置をサーチし始めた。






      その頃、箭兵衛と龍一は交感しあっていた。
      人とドラゴンは地球の成り立ちと対峙しようとしていた。

      そしてその頃今まさに日本海の海底では、一匹の(超巨大な)鯰が
      四本の髭を日本の地上に聳え立たそうとしていた。
      実はノーチャンスの女神の選択は正しかったのだ。


      数十万年振りに目覚めた巨大鯰は四本の髭を西日本の地表に
  ゆっくりと延ばしていった。
      あと数日で四つの髭の先端が邪悪な攻撃性を帯びて、
  日本の地表に出現することになる。


     でも結局箭兵衛と龍一は間に合うことになる。
     それはノーチャンスの女神の功績として、
     全エーテル界に知れ渡ることになる。
     人は、いやドラゴンも、エーテル体も、
     『起源は同じだった』ということなのかもしれない。
     このことは後に検証される。
     もっとも検証する存在が残っていればの話だが。



     もちろん日本人の95%は死に絶えることになる。
     連続的な地震、噴火、火災に加えて、地面の亀裂と、建造物の全壊の様は、
     急激に加速された地殻移動のなせる業だった。
     温度変化、大量の雨、やっと生き延びれた人々のサバイブ。
     そしてただ残ったのは、5%の国民と、新大陸の中央に今もなお
     嫋やかに鎮座する富士山の英姿だった。

     次章では、日本列島がユーラシアを(急速に)離れ、太平洋のど真ん中に
     日本大陸を形成する様子を描いていく。
     地球史的、地学的に言って、プレートの特異点が二重に(多分三重かも?)
     存在する世界的に稀有なこの地域に、その海底に、
    よりにもよって、なぜ、鯰がいたのかも!    


あ、その前に「おまけ」があります。





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